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postheadericon 2011年10月湖国でジョギング

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   湖国でジョギング(術後五年を記念して) 
                   皿海英幸
 「なんで琵琶湖なの、妙だな。新幹線開通の九州とかは考えなかったの?」京都駅で合流し、地下街にある京料理の店に落ち着いた時、息子が訊いた。嘉田知事には申し訳ないが、術後五年の旅行に琵琶湖は微妙と思うだろう。だけど、私にとっては術後一年の記念に妻と大津港発の外輪船ミシシッピー号で遊覧した思い出の地。そして「船も楽しいが、いつか湖岸をジョグしてみたい」と思っていた。それに京都で息子の顔を見ることもできる。
 「時間があれば昼食後、大津へ一緒に行って遊ばないか」息子に話しかける。「行かないよ、早く帰ってこれを冷蔵庫に入れたいから」と言い、妻が「息子へ」とことづけた手料理が入ったパックを指さす。「じゃあいいや、ここで別れよう。元気でいろよ」
 JRで石山駅へ行き、石山寺に参拝。ここは紫式部が源氏物語を記した寺として有名だが、安産祈願の寺でもあるようだ。多宝塔は修理中で全貌を診ることができなかった。門前の土産屋で鮒寿司パイを見つけ購入。個性の強い鮒寿司が苦手な人でも楽しめるというが、さてどんな味かな。娘と一緒に食べるのが楽しみだ。
 次に京阪電車で三井寺駅に行き、三井寺に参拝。天智・天武・持統各天皇の産湯を汲んだ「御井(三井)」にちなんだ伝統のある寺。だけど、ここからは琵琶湖が見えるので何だかそわそわ。術後五年を迎えられた報告と家内安全をお願いし、早々に引き上げる。
 天気も良い。いよいよだな。京阪浜大津駅のコインロッカーに荷物を置き、ジョグ開始。左に琵琶湖を見ながらのジョグ。なぎさ公園と名付けられた散策公園はウォーキングを楽しんでいるカップルが多い。
 また、釣り糸を垂らしている人もかなりの数だ。「えっ!」釣りをしている付近には「外来魚回収ボックス」が設置されている。外来魚が増え、湖の生態系が変わっているというニュースを聞いたことがあるが、その対策か。
         
 大津プリンスホテル付近では公園に寝転んで建物の写真を取る。高さ136mではそうしないと全貌が収まらない。
 景色を楽しみながら走り、気に入った地点で立ち止まって写真を取る。このやり方だと走行距離はわからないが、今日は大会ではない。旅先のジョグを私流に楽しみたい。
 途中、広い砂浜あり。一見海水浴場みたいだ。「遊泳禁止」の看板があり、他にも私同様の感じ方をする人がいるようだ。試みに砂浜を走るが、これはきつい。かなり足に負担がかかる。今日はやめにしておこう。調子に乗り、膳所城公園までの往復をジョグ。時間にすれば一時間半程度かな。たっぷり楽しんだ。
 着替えを済ませ、大津市内を散策。夕闇が迫る街から祭囃子が聞こえてくる。偶然だが、今日は大津祭りの日。江戸時代初期に始まった伝統行事。華麗な曳山が市内を巡行する。そして街の所々で曳山の上から「厄除けちまき(食べられない)」をまいている。これを拾おうと大変な争奪戦に参戦。なんと一つ拾うことができた。これも術後五年のお祝いか。それとも本日、市内二箇所の名刹にお参りしたご利益か。とにかく持ち帰り、玄関先に飾っておけば一年間は家内安全という縁起物。よし、いいぞ。
 夕食はスーパーで弁当と地酒を購入し、ホテルの自室で。胃のない私にはこれが一番安心。息子に会え、思い出の地で気持ちよくジョグし、縁起ものともいえる「ちまき」をいただくことができた。今日はよき日であり、気持ちよく酔えそう。ただ、術後一年の時のように滋賀の地酒でうたた寝をしないよう気をつける必要あり。
             (以上十月九日)
 始発電車の音で眼が覚める。宿泊したホテルは浜大津駅のまさに隣。窓から外を見ると真下にレールが通っている。六時にチェックアウト。「朝日が昇る琵琶湖の写真が撮れたらいいな」と思ったが、朝日は逆方向の山側から登るので断念。
 JR大津駅に行き、彦根行の切符を買い乗車。さすが本線、早朝でも客が多い。福塩線とは違うな。一時間弱の乗車で彦根駅着。
 駅周辺を散策し、その後朝食を取る。「うっ、しまった」食べ始めるとすぐに吐き気を催し気分が悪くなる。寝不足か、もしくは昨夜の飲酒のせいだろうか。ともかくしばらく休憩せざるを得ない。だけど休憩があとでよい結果に。
 九時前、彦根城着。まずは彦根城博物館へ。井伊家の貴重な武具や居間などが見学できる。実際は天守ではなく、このあたりで生活していたという。
 「しまった、またやってしまった!」博物館を見学し、いよいよ彦根城へ向かおうとした時、博物館・城とセットで買ったチケットがない。「荷物は無料のコインロッカーを使って下さい」と博物館職員に言われ、荷物を収納した際、チケットを紛失したようだ。幸いチケットを見せなくても入場でき、やれやれ。
 三階三重の天守がそびえる彦根城はさすがに国宝、美しい。戦後コンクリートで築いた城とは違う。最上階からは彦根市内、琵琶湖の眺めがよく見える。高所恐怖症の私だが、怖さより美しさを感じる。
 天守・西の丸等主な場所を見学し終えたころ、「十時三十分より、天守閣広場にひこにゃんが登場します」のアナウンスあり。朝食に失敗し、休んできたのでちょうど良いタイミングで出くわすこととなった。ラッキー。
        
 「最前列の人はしゃがんでください。ひこにゃんを見て写真を取ったら後ろの人と変わってください。入れ替え制とします」と係員。
「おい、天守を見に行こう」という夫に「父さんだけ行ったら。私はひこにゃんを見ていたい」と妻。「天守の見学は早めに切り上げて早くひこにゃんを見ましょう」と言っているグループ。すごい人気だ。
 「彦根城を世界遺産に」という看板が市内の至る所で目につくが、着ぐるみごときにこのありさま。本当に世界遺産を目指してもいいのかな。
 ひこにゃんの写真を取ると再び駅前に。昼食はB級グルメに出場した「彦根ちゃんぽん」 麺の上に野菜が山盛り。そしてスープはあっさりした和風味。「半分食べたら酢を足すとうまみが増し、最後までおいしく食べられます」というのが特色のようである。
 食事の後、駅のコインロッカーに荷物を入れ、ジョギング開始。まずは彦根城を横目に見て琵琶湖を目指す。琵琶湖に出たら左折し、湖岸道路を走る。このあたりも湖畔は公園になっているようだ。遠くに竹生島が見える。
目指すは市立病院。私の知人K医師は市立病院緩和病棟に勤務している。あいにく今日は出張で不在だが、建物だけでも見ておきたい。
 「うわ!すごいな」病院の建物はとても大きくて新しい。市立病院と言えば、建て増しを重ね、迷路状態で初めて行ったら迷子になりそうな病院が多いが、ここは理路整然とした立派な建物のようだ。彦根市は財政が豊かなのか、それとも医療によほど力を入れているのか。
 帰りは湖岸道路とは違う道を適当に曲がって走る。方向としては正しいが、一瞬今どのあたりを走っているのか分からなくなる。しばらく走るとベルロードに出る。そこを走っているとキャッスルロードに出て、彦根城へ。やれやれ。これで間違いなく駅へ帰ることができる。時間にして一時間半くらい走っていたかな。距離の割にちょっと遊びすぎ。
 着替えると、駅前のスーパーに入り、お土産を買う。同じく手作りパンを買い、コーヒーを注文する。店の一角で電車の時間までをのんびりと過ごすことに。
 下りの各駅停車に乗る。京都駅までは約一時間。読書をしていたらうつらうつら、心地よい居眠り。頭に入りそうにないのでやめ、ウォークマンで音楽鑑賞。大津駅通過の際には再び下車してみたい気分になったが、帰りの高速バスを予約済みなのでそうもいかない。
 京都駅前バスターミナルで福山行高速バスに乗る。有意義で楽しい旅だった。これからも「前例がなければ自分が前例となるような生き方をしたい」という気持ちがわいてきた。生かされている命、大切に使いたい。
 でも、今回、散財したなあ。しばらくは節約生活を心がけよう。
              (以上十月十日)