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postheadericon 2011年5月ラジオのイヤホン

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

  ラジオのイヤホン
 「今電気屋さんにいる。頼まれていた名刺サイズのラジオは震災の影響で品薄だって。で展示品なら四千円台だけど一つある。それでいい?」妻から電話。「いいよ。それを買ってきて」「イヤホンのサイズ、長くても短くてもいい?」「どっちでもいい」
 入院中はベッドで聴くので長さはこだわらない。もっとも二週間余の入院予定だが、今四人部屋に一人。(結果としては一週間だった)イヤホンなしでも迷惑をかけないだろう。ただし、イヤホンで聞けば消費電力が少なくて済むし、感度もいいらしい。
 それにしても、四人部屋に一人。「さみしくないですか?」と聞く看護師がいるけど、私には快適。室料差額を考えず、個室で過ごせるなんてもったいない話。
       
  太りたい
 私の身長一六四㎝で体重は五一㎏。標準体重から言えばやせており、もう二~三キロ太っても問題ない。
 新聞・雑誌の取材を受け、私の写真が載るとやせすぎており、人相がよろしくない。
 入院すると病院食だし、間食(捕食)をしないので少しやせた。顔だけでなく、医師が聴診器で診るとき肋骨が浮いて見える。父がそれを見て帰宅し「英幸はやせているなあ」と母に話す。母は東京の娘(私の姉)に電話で話す。しばらく会っていない姉は心配する。「肺炎がこじれているのでは。がんが転移しなければいいのだが」人から人へ伝わると心配の種は大きくなり、騒ぎとなる。
 心配掛けて申し訳ない。やっぱり太りたい。でも、胃がない私には難しい。岡大病院の主治医は「もう少し太ったほうがいいけれどね。血糖値を上げずに太られるかな」やっぱり難しい。

   思わせぶり
 私の職場には口達者な女性が多い。退院すればおそらく聞かれるだろう。「ねえ、美人の看護師さん、いた?」
 「貴女に毎日のように会っているので、他で美人だなんて思うことはほとんどありません」内祝いのつもりでこう答えてみようか。
 でも相手は口達者。「うまいことを言って。本当は私じゃなくてAさんに会っているからじゃあないの」なんて返されるかもしれない。「なんでそんなことを考えるのかな。ところで質問の答え、Aさんのいないところでしてもあまり意味のないような気がします」
 つまらないことを考えているなと自分で思う。入院中は退屈ということかな。それとも経過順調ということかな。気のきいた小話ができなく、お許しください。

  気合を入れて
 「がんになった人であなたのように強い人は初めてです」三月に私を取材した記者が言った。だけど、肺炎で入院以来気弱になったようだ。
 「検査しましょう」と言われると「肺のほかにもどこか悪いところがあるのかな」「悪い結果が出たらどうしよう」マイナス思考だ。家族が心配して話しかける言葉にも敏感に反応し、不安になる。
 体調はずっと良く疲労はためていない。年中仕事中はマスク着用。周りに風邪の人はいなかった。肺炎になった理由に思い当たるところが全くないから不安になるのかな。病気というくらいで、今は気が病んでいるのかな。
 「あなたの生き方を支持します」「あなたと知り合いだということ、自慢に思います」という友人知人がいる。「前例がないのなら、私が前例となる生き方をしたい」と思う私がいる。そろそろ前向きに生きてみよう。「気合が足らないから病気になる。気合で直せ」という息子の言葉をよりどころとして。