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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

       上下の市より(2018年05月12日)  皿海 英幸

 「ねえ、私四月二十八日(土)は一日中外出しようと思うけれど、いいよね」妻が話しかけた。「いいけど、どこに行くの?」「端午の節句祭りに合わせて『天領上下の市』が開催されるの。そこにひな祭りの時のようにつまみ細工の店を出すように誘われているの」「ふーん、じゃあ僕も一緒に行こうかな」ということで二十八日は夫婦して上下に。

 当日九時過ぎ到着。市は十時からなので準備の時間はたっぷり。妻の店はS商店の大きな倉庫の一角。御物を運んだり、祭りの幟旗を括りつけたり。

 倉庫は蛍光灯があるがイメージとしては薄暗い。骨董品・陶器・柿渋製品などの店が多い。「ちょっと客筋が違うような気がする。倉庫につまみ細工を買うような人が入ってくるかな」という一抹の不安はあるが、逆に妻の店だけが明るさを醸し出していると思えばいいのかな。

 だけど本当によかった。娘に持病があるため、生活のほとんどを娘優先で過ごしていた妻。「自分のための時間も大切に」「趣味のある生活を。支援者が元気でいないといい支援はできないというよ」と何回言ったことだろうか。

 退職する頃からだろうか、つまみ細工を始めた妻。一度出店すると「今度はあそこの祭りにも参加したら、紹介してあげるよ」「あそこのバザーに展示させてもらえばいいよ」出店していると知り合いができ、声をかけていただく。ほとんど儲けにはならないけれど、やりがいを感じ、知り合いが増えている。そんな妻を見つめる私もうれしい。

 周りの人たちの中には、「退職したから」「正職から契約社員になったから」ということで趣味を生かしてイベントに参加している人が結構いるという。顧みて、私はどうなのだろう。今年度末に定年を迎える。趣味を生かして活躍できる場、人のつながりを実感できる何かがあるだろうか。ちょっと考え込む。

 今後は七十歳まで働かなければ、福祉制度は崩壊する恐れがあると言われている。また、職場で働いているときは、職場でしか通用しない脳の働きになっている人がほとんど。定年で職を失った時、脳の働きがどうかということもある。ということは普段から仕事一筋ではなく、地域の活動、ボランティア活動と何らかのかかわりを持つことが必要。自分はがんに関する活動は行っているが、ちょっと範囲が偏っているような気がする。ここはしっかり考える必要あり。

 それはともかく、つまみ細工の店は準備が整ったので、新緑の季節を楽しむジョグに出る。上下駅をスタートし、町民会館を行きすぎると「分水嶺地点」を左折し、矢野温泉の跡地まで走る。「約四キロ」という表示があったが、全く初めてのコースだからか、くねくねと曲がった道ばかりだからか、片道四キロよりも長く感じる。

 ジョグを楽しみ、着替えを済ませると端午の祭りを歩きながら楽しむ。各々の店先に五月人形を飾ってある。立派なのがあるので、カメラで撮ろうとすると、ガラス越しなので、私も写るケースあり。途中、妻が店を出している関係でコーヒーチケットをいただいているので、コーヒーを飲みに画廊へ入る。「ここへどうぞ」と言われ、座った席は甲奴在住のアメリカ人とその友達たち。隣のテーブルは三次で英語を教えているアメリカ人のグループ。英語と日本語が飛び交う中で私は雰囲気だけを楽しむ。上下の祭りは結構広範囲から来られており、府中市からが少数派か。

 妻から電話あり。「倉庫の中はやはり客筋が違う。道路沿いにテーブルを移動する許可を得たから手伝って」「了解。すぐに合流します」

 テーブル等重たいものは私が持って移動。並べ終えると「やはりつまみ細工は明るいところで若い女性にのぞいてもらいたいよね」

 時間はすでに十二時を過ぎていた。バスは十三時過ぎ。急いでスーパーでお土産と昼食用の食糧を買い、バス停へ。

 定刻にバスは発車。乗客は少ないが、運転手さんとなじみの感じ。まさにローカルバスの雰囲気。でも上下から目先車庫まで九百五十円にはびっくり。高いなあ。でもまた上下のイベントに妻が参加するときはこのバスを利用するだろう。それとも「フルマラソンの練習だ」と思い、ジョグを楽しみながら帰ろうか。ちなみに上下と府中間は約三十キロだそうです。