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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    心配いりません(2018年03月20日)  皿海 英幸

 「うーん、困ったな」職場で行われる研修旅行、私はTさんの介助担当となった。Tさんは身体障害があるので車いすで移動。そちらは大丈夫。「てんとう虫マラソン」等車いす体験会や、車いすによる介助研修等受講している。職員としてしっかりやりたい。

 ただし、身体障害があるのだが、昼食はバイキング方式なので、食事中の移動もある。胃を全摘している私は術後十年以上たった今でも食事に失敗することあり。まして外食、不安が大きく、他人の介助より優先するものがある。どうしよう。

 朝の職員ミーティングで事情を説明する。そして、車いすの介助は私だが、食事中は職員Hさんが中心となることに。ほっとすると同時に、「みんなに気を使ってもらったのだから食事は細心の注意をし、失敗しないようにしなければ」と決意。

 さて当日三月十三日。天候は良い。九時前、リフレを大型バスは出発。Tさんと私はバスの最前列に並んで座る。大型バスなので階段があり、Tさんの移動しやすさを考えての結果。目指すは総社市吉備路農園。いちご狩りだ。総社市といえば吉備路マラソンに参加したことあり。そして備中国分寺周辺で行われるレンゲ祭りを楽しんだことあり。国分寺の五重塔はとても美しいし、心を安らかにする。

 「なんでいちご狩りや、バイキングの食事をするのが研修なのか」と思われる人がいるかもしれない。でも利用者の中には外出が億劫な人がいる。他人がいると緊張する人がいる。そういう人に取り、外出すること自体、他人がいる中で食事をすること自体研修だ。

 また、バイキング形式だけにいかにバランスよく、何をどうとるか、食べ過ぎないようにどのくらいの量を食べるか、貴重な研修となる。

 以前は温泉で入浴、食事をし、テキストをもとに学習会を行っていた。また、同じように清掃をメーンとしている障害者施設を見学していた時期もあった。

 今、何でもありだと思う。社会経験に乏しい利用者は、色々な体験を通して得ることはあるだろう。自立とはそういうことかもしれない。

 最初の目的地「農マル園芸 吉備路農園」到着。手続きをすますと早速イチゴハウスへ。ここはベビーカー・車いす対応施設。ここのイチゴは高設栽培といい、棚から垂れるようにイチゴがなっているので車いすでも手を伸ばせば実を取ることができる。そして種類が豊富なので様々なイチゴの味や香りを楽しむことができる。ただし、昼食までの時間がすぐそこまで来ているので、どちらを重視するか考える必要あり。果物は意外にカロリーあり。

さて、昼食はサンロード吉備路の二階にある食堂。まずはバイキングなので車いすに乗ったTさんを私が押しながら料理を見てもらう。Tさんの注文に合わせてHさんがお皿に料理を取り分ける。

Tさんが席につき食事を食べ始めたので私は自分の料理を取りに行く。まずは野菜や消化の良いものを控えめに皿に乗せる。外食であり、仕事中なので食事に失敗しないことが大切。「皿海さん、食事気を付けて。食べやすいものがありますか。でも楽しんで」同僚Sさんが声を掛けてくれる。「ありがとう。ゆっくり落ち着いて食べますね」

食事に失敗すると胸がむかつくというか、吐き気をもよおし息苦しくなる。吐けば楽になるかと思うのだが、胃がないからか、吐くことができない。こういう状況になると薬を飲んでも点滴をしてもらっても効果がない。前触れもなく突然やってくるから厄介だ。自分の身体の様子を感じながら落ち着いた雰囲気で食べることが大切。

今日は大丈夫そうなのでお変わりを取りに行く。「皿海さん、こちらには豆腐がありますよ。これなんか身体にやさしいですよね」また一緒になったSさんが声をかける。「ありがとう。豆腐やおからは最初に選びました。あなたが気にかけてくれるので今日は大丈夫みたいです」お腹いっぱいになる前に胸がいっぱい。

がんの行事の打ち合わせを兼ねた食事会の際にも「皆さん、皿海さんも食べやすい料理を注文して一緒に食べましょう。皿海さん楽しんでね。」と言ってくれたSさん。あなたと一緒の時は外食への不安は不必要ですよね。

もう少し食べられそうな気がするが、このあたりで食事を終えようと思い、コーヒーを飲む。離れた席のSさんを見ると同じテーブルの利用者に声をかけながら楽しんで食事をしている。

食事を終えると、屋外散策グループとのんびり過ごすグループに分かれることに。私は散策グループ。意外に思う人がいるかと思うが、糖尿病の私は食事の後、軽いスポーツは必要なこと。丹頂鶴を飼育しているというのでそれを見るのも楽しみだ。「うーん残念」鳥インフルエンザの危険性があるというので黒い色のゲージの中での飼育。近くでしっかり観察はできなかった。でも食事に失敗せず、思い出に残る研修旅行だ。