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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   楽しんで完走(2018年02月12日)   皿海 英幸

 立春を迎えたとはいえ、今年は寒い日が続いている。そんな気候だからこそ「北風を突き抜けてゴールしたとき、アナタはきっと太陽のように暖かい、恋人や家族、友人の“愛”に包まれるだろう」という文章をすんなりと受け入れることができる。二月十一日神戸ポートアイランドで「戦争、災害、貧困に苦しむ子供たちに愛の手を!」というテーマの下に開催される「神戸バレンタイン・ラブラン」のテーマ説明。

 「ここは気を付けなければ」新神戸から地下鉄で三宮へ着いた。昨年は出口を間違え右往左往した。しっかり案内板を読み、矢印の方向へ進む。無事JR三ノ宮駅を経由し、ポートライナーの駅へ到着。ポートアイランド「市民広場」へ向かう。「おそらくこっちだったはず」という思いで昨年行動したのがいけなかった。三宮は阪急・阪神・JR等たくさんの企業の路線が乗り込んでいる駅。しっかり確認が大切。

 さて、無事受付をすますが、ここで少々慌てる。ゼッケンの入った薄いナイロンの袋、どこから開けるのかわからない。あっちこっちはがそうとするが上手くいかない。横着をせず、メガネをかけて探すとはがして取り出すことができた。最近視力の衰えか、刺身や納豆についているたれの小袋も眼鏡なしだと苦労する。

 ゼッケンを取り出すとTシャツに安全ピンで取り付けるのだが、今日はいつもより高く胸元へ。希望の会(スキルス胃がん患者・家族の会)作成胃のイラスト入りTシャツ着用だが、ちょうどシャツの真ん中あたりに胃があるのでそれを避けるため。

 この件に関しては昨夜「楽しんで走ってください。胃のTシャツをでかでかとアピールして」と友人からメールをもらった。

 神戸の看護学生にがん体験を講演したところ「皿海さんの生き方・考え方を支持します。神戸の街も走ってください」と言われ、参加しているのがこの大会。昨年までは私だとわかりやすいかと思いカープのユニフォームで出場していたが、今年は方針を変え、胃を全摘している私が胃のイラスト入りTシャツを着用して完走を目指す。とてもリアルなイラストだけど、看護学生なら意気に感じてくれるはず。そして他の参加者も何かを感じてくれればと思う。

 スタート時間が迫り、招集場所へ。空は明るく晴れているのだが、風がとても寒い。下にランニング用の長そでシャツ着用だが思わずブルッ!ウインドブレーカーが恋しいが着用すると胃のイラストが見えにくい。スタートすれば徐々に体は温まるはず。

 十二時ちょうどにスタート。神戸学院大チアリーダー部メンバーの応援を背に走り始める。身体は徐々に温まる。集団がバラケ始めると時折吹く突風が気にかかる。安全ピンで付けたゼッケンだが、突風時には音を立てて揺れる。帽子も飛ばされそうな予感がするのでマジックベルトでサイズを小さめにすると同時に向きを変える。

 「やっぱり」帽子が転がってきた。「ごめんなさい」と言っている方向を見ると相手は視覚障害者。私は以前視覚障害者の伴走をしていたので、帽子を拾いに走る。進行方向とは逆だが、ここは「愛」の精神。手渡すと「ありがとう」と言い微笑むコンビ。

 「わ!すごい」海の見えるコースに出ると一面に波が。とても瀬戸内の穏やかな海とは言えない。帽子を手に取って走る。

 主治医に「人と競争せず、マイペースで走ってください。胃を全摘しているのだから」と言われているが、目の前をタイガースのユニフォームで走っているランナーがいると向きになって抜きにかかる。でも今年はカープのユニフォームではないからできるだけ自重。

 この大会、名前の通り男女のカップル・グループでの参加者が多い。私は広島県から単独で参加。でも看護学生に紹介してもらった大会。毎回のようにメールで応援してくれる友人がいる。彼女たちの存在が寒風の中での大会だが、心を温かくしてくれる。

 気持ちよくゴール。この大会は靴につけた計測チップでタイム・順位が出てくる仕組み。ゴールすると外し回収箱に入れるのだが、指先が冷えてうまく外せない。すぐに女性ボランティアが来て外してくれる。靴についているので仕方がないが、女性が足元にひざまずいている姿勢を見ると申し訳ない。「ありがとうございます」気持ちを込めて丁寧にお礼を言う。

 さて、ゴール後のお楽しみ。主催者日ハム製品を使ったチャリティフードショップ。年により内容が少し違うが今年は焼き肉・トン汁をいただく。合計六百円は安いか、高いか。チャリティだから少々のことは良としよう。そうそう、胃のイラストTシャツ着用の写真、もちろん撮りましたよ。