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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   ペットボトルをどうするの(2018年1月23日)   皿海英幸

 「十六日に福寿会館で『自閉症疑似体験会』があるのですよ。
私、ペットボトル持参で参加します」友人が話しかけた。
「ふーん。暖房がきいているとのどが渇くよね」
「そうじゃあないのです。カッターナイフも持参なのです。ペットボトルに何か細工をし、疑似体験に使うそうですよ」
「そうなのか、面白そうだけど平日だと私は参加できない。しっかり学習し、あとで教えてね」
「わかりました。皿海さんの分も学習してきます。居眠りなんかできないですよね」
こんな会話をしたのが十五日。

 「行ってきましたよ」十七日に会うと、彼女の方から話しかけてきた。
「ペットボトルの底を切り取り、目に当てて前方を見るところを想像してみてください。視野が狭いでしょう。周りのことはわからないでしょう。それが自閉症の世界です。自閉症の子供たちは周りが見えない状況の中で判断しているのですよ。だから周りに積み木遊びをしている子がいても積み木を倒してしまうことがあります。」

 熱心に説明する彼女。なるほど、最近は自閉症にも関心が集まっているので、本やインターネットで調べることもできる。だけど、自閉症の子供を育てた経験のある講師の指導により、疑似体験をしながら話を聞いて学習するという貴重な体験をした話を立ったままで聞くのはもったいない。そこで彼女の話の大切な部分を記してみたい。

 「ペットボトルとか物を机にドンと置く子がいます。乱暴と思うかもしれないけれど、程度がわからなかったり、身体の使い方がわからなかったりする子がドンと置くことで、その衝撃を体の中に入れてわかろうとしています。

 軍手をはめたまま折り紙を折ることができますか。うまく折ることができないですよね。そんな時、『頑張れ、頑張れば折れるようになるよ』と言われたらどうでしょう。イライラしますよね、むかつきますよね。そんな世界で生きているのですよ。安易な励ましは良くないです。

 エジプトへ団体旅行に行ったとします。添乗員もスケジュール表もあり快適でした。一年後、エジプトへ一人で行くことができますか。『もう一回体験したのだからスケジュール表がなくても大丈夫でしょう。一人でもだいじょうぶでしょう。メモは無くてもいいよね』不安になりますよね。それが自閉症です。

 私が皿海さんの後ろにいて話しかけるとき、肩をポンとたたいてから話すことがあるとします。皿海さんは振り返り、私だとわかり話をしようとしているのだと気が付くと安心しますよね。自閉症の子はそれがありません。ただ「叩かれたけれど、どうしてなの」と思うのです。

 自閉症の子は時間と空間の組織化が難しいのです。時間を逆算できない。だからやることがいつもみんなより遅い子がいます。『いつもお前だけ遅いじゃあないか。頑張ってしっかりやれよ』といっても無理。劣等感に陥るだけ。それよりその子ができるように配慮することが大切。

 粘土細工が苦手の子がいます。『今日は粘土のスケジュールだから全員しましょう』といっても無理なものは無理。チョークで黒板に線を引こうとして、ギーギーと音がすることがありますよね。みんな嫌いでしょう。慣れなさいと言いますか、慣れるのは無理、自閉症の子にできないことを強いてはいけません。教室の中で落ち着きのない子がいます。困った子(トラブルメーカー)と思っていませんか。困った子〓困っている子なのです。その子自身に悩みがあるので、それが表出した時困った子、落ち着きのない子となるのです。周りの人が悩みを聞き出し、理解すれば徐々に落ち着いてきます。

 自閉症の子は暗黙のルールがわかりません。だから指示を出す場合は具体的に。そして言葉で『あーだ、こーだ』というより、絵カードや文字カードを有効に使った方がわかりやすいですよ。『適当に』なんて無理な話。自閉症の特性を知り、対処の仕方を知ったうえでかかわる人が増えれば自閉症の人にも生きやすい社会になるのではと感じました」

 なるほど、しっかりと学習をしてきているようで、私もうれしい。お互い身近なところに障害者がいるのだから学習をし、それを伝え合うことは大切だと改めて感じることができた。

 最後に、文科省のホームページより、自閉症について記している個所を写しておきます。
 「自閉症の定義」 自閉症とは三歳くらいまでに現れ、
①他人との社会的関係の形成の困難さ 
②言葉の遅れ
③興味や関心が狭く、特定の物事にこだわることを特徴とする行動の障がいであり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。