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postheadericon 良いムードでしたね(2017年8月25日)

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    良いムードでしたね(2017年8月25日)  皿海 英幸

 「よっしゃ、来たぞ。これで安心だ」「生きがい療法学習会」(看護学生と共にがん克服体験談を学ぶ)に講師として参加要請のメールがすばるクリニックより届く。毎年の依頼ではあるが、術後十年を超える私、「そろそろ他の人の出番かな」と思う気持ちと、「ぜひ看護学生に体験を伝えたい」という思いが交錯している。

 おとなしく、人前でしゃべることが苦手な私になぜ講師として参加したいと思わせるのか。「皿海さん、あなたが元気でいてくれるからスキルス胃がんの患者さんに『希望をもって治療をしよう』と言えることができるようになった」とある看護師に言われ、意気に感じたことがある。そのことが影響しているのではと思う。

 さて当日の昼前、新倉敷駅前に立つ。暑い。正午前なので一番熱い時間帯なのだろう。食事をすますとバスで文化センター入口に行き、徒歩で会場「玉島市民交流センターへ」ちょうど看護学校の皆さんも貸し切りバスから降車している。

 二階の会場へ入る。開会一時間前なので、まだ余裕がある。鏡の前でネクタイを締め、上着を着る。看護学生は皆、黒いスーツなので夏とはいえ、クールビズでは失礼かな。私は冷房に弱いし。

 リュックから今日使用するTシャツ二枚を取り出し、講演メモに目を通す。当日じたばたしても仕方がないのだが、メモを読んでいると少し落ち着く。

 看護学生も会場へ入場。気の合った友達同士か、数人のグループで写真を撮りあっている。こういった光景は今まであまり見ていない。今年の学生はノリがいいのかな。その後、引率の先生、生徒代表、すばるクリニックスタッフ、講師で本日の打ち合わせ。「子育て中の学生が居り、子供を引き取りに行く時間があるので、今日はスケジュール通りにお願いします」と言われる。了解です。私は体験者では三番目に講演する。仮に私の前の人がオーバーしていたとしても私でしっかり調整しましょう。

 いよいよ開演。まずは伊丹先生による講義「がん闘病者への森田療法への応用」題名は難しいが、パワーポイントを使ってわかりやすく話される。学生は「生きがい療法」の事前学習をしていることもあり大丈夫だろう。

 さて、いよいよ私の出番。演壇に向かう私にホワイトボード用の黒マジックを渡すスタッフ。「息があっていますね」と言いたいところだが、「今日は赤でお願いします」一礼すると「府中市から来ました皿海と申します」と言い、ボードに大きく皿海と書く。「縦棒を伸ばし、突き出たらどうなるでしょう、血の海ですね。赤で書いた理由がわかりましたね」私は自己紹介で笑いが取れたら「今日の講演は成功だ」と思い落ち着ける。さて、今日の結果は会場で「クスクス」思ったより小さな反応だが、笑いが取れたぞ。よっし!

 その後はメモを見ながら治療経過、腸閉そくを起こした一日(人生最大の危機)フルマラソン出場等講演。最後に「私の経験を通して、皆様に訴えたいこと」と題し、*絶対に諦めない。諦めるより明らめる *苦しいときこそユーモアを *医療者は技術だけではなく、感性を磨いてほしい と訴える。ちょうど予定の時間だ。

 そのあとはグループワーク。二十九名の学生が三グループに分かれる。机をかたづけ、椅子で円陣を組むように座る。「もっと近寄ろうよ。よし、私たちのグループが最も小さな輪になったよね」先生は講師にマイクを配る。「皿海さんには必要ないですね。よく通る声だから」息があっていますね。まさにその通り。

 最初に口火を切るのは難しいようなので、私から学生に呼び掛ける。「皿海を赤で書いたらいいよとアドバイスしたのは妻。『このことは学生には言わないで』と言っていたよ」というとどっと笑いが起こる。その後は打ち解けたのか、次々と質問。「告知を家族はどう受け止めたのか」「がんになり、何がどう変わったのか」「フルマラソン出場のきっかけは」等々。

 講演中は学生の反応がいまいちわからなかったが、きちんと聞いていてくれたのがわかる質問、態度。そこで私は当時を思い出しながら、精いっぱい丁寧に答える。同時に入院中の看護学生・先生とのエピソードも語る。がんの話し合いなのに私たちのグループは終始笑いあり、和やかな雰囲気。グループワークが終わると学生たちはまとめに入り、グループごとにまとめを発表する。その後は全員そろい、記念撮影。今日は有休をとっての参加なので、学生たちと一緒のところをきちんと写してもらいたい。

 すべての行事が終了したので、先生にお礼のあいさつ。「皿海さん、学生と打ち解けており、良いムードに盛り上がっていましたね。」と先生。ありがとうございます。私でよければぜひ来年も呼んでください。