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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    転失気に思う(2017年5月5日)   皿海英幸

 日曜日五時十五分、NHKで「演芸図鑑」という番組がある。落語やコント・浪曲など演芸で笑わせてくれるので、毎回のように朝食を作りながら楽しんでいる。

 さて、先日の出し物に古典落語で「転失気(てんしき)」を演じていた。「転失気」とはおならのこと。だけど、知ったかぶりで負けず嫌いの登場人物が騒動を起こすお話。それを聞いていた私は、職場の利用者を思い出した。

 「○○さんは、私のそばでおならをするのですが、注意をしてもらえませんか」「▽▽さんは、人前でおならの話をするのですが、聞きたくない。やめさせてもらえませんか」という相談を受けたことがある。

 基本的には当事者同士、利用者間で注意をするなり話し合って分かり合えば一番いいのだが、コミュニケーションに苦手意識を持つ人が多いので、職員が対応することになる。

 「お腹の調子はどうですか。特に悪いのでなければ人前でのおならはエチケットの面からふさわしくないように思います。席をはずしてすることはできませんか」という話をする。また、多くの人の中で話をする場合は楽しくなる話題、元気が出る話題に心がける必要があるだろう。

 ただ、私もおならをよくする方だと思っている。「皿海さん、血糖値の上昇を緩やかにする薬ですが、この薬を使うとお腹にガスがたまりやすいのです。おならが多くなる人もいるのですがいかがでしょうか」内科医に言われたことがある。「かまいませんよ。おならより、血糖値の安定を望みます」と返事をした。確かにそれ以来、おならが多くなった。家族にしばしば指摘される。飲んでいる薬により、おならが出やすくなる場合もあるということを知ったうえでの対応も必要かと思う。

 さて、ここからが大事。先日、福山で開催された学習会に参加した。時間の都合で福山駅近くのラーメン屋で野菜ラーメンを食べ、すぐに急ぎ足で会場に向かった。会場へは開催時間より五分程度早く到着して知り合いに挨拶をすることができた。

 ところが会が始まると同時にお腹が痛くなり、冷や汗が額に滲み始めた。「急いでラーメンを食べ、休憩なしで歩き始めたからかな。久々に食事に失敗したようだ」お腹をなぜたり軽くもんでみたりしたが状況は変わらない。食事に失敗したのなら、一時間くらい静かにしていれば収まるだろうと思うが、なかなか学習に集中できない。二時間を少し超えて学習会は終了したが、お腹の状態は治まらない。

 退院して間もないころ食事に失敗したら、病院のベッドで点滴をしながら二~三時間過ごしたことがあるからもう少しかもしれない。待てよ、もしかしたら、急いで食べたため、食道と腸のつなぎ目に食べたものが引っ掛かり、腸閉そくを起こしているのかもしれない。不安が募り始めた。収まっていた汗が再びにじみ始めた。

 吐き気はない。「早くおならもしくは便が出れば腸は詰まっていない、大丈夫ということになるのだが」と思いながらお腹を「の」の字にさすったり、つなぎ目あたりをもんだりする。しばらくすると小さなおならが出たような気がする。気休めかもしれないがちょっぴり安心。今日は早めに寝ることにしよう。明日の朝起きてもお腹が痛かったらその時対策を考えよう。

 翌朝早朝に起床する。お腹の痛みがほとんどなくなっている。少しお腹に張りを感じる。「よし!」気合を入れ、トイレに行き、便器に座る。「ブウ」大きなおならと共に、太めの便が出る。よかった、助かった。私に取り、おならがそして便が毎日出ることはとても大切なことであり、幸せなこと。

 とはいえ、人前でおならをすること、しかも音だけでなくにおいを伴うと失礼に当たることは承知している。できるだけ、予感があったらトイレに駆け込んですることができればと思っている。

 「転失気」失礼ではあるが、毎日あることは大事なことであり幸せなこと。どんなに魅力的な人であれ、必ず訪れるもの。周りにわからないようそっとできればいいな。「大切なものだから」と開き直って堂々とすると嫌われることになる可能性大。心しておきたい。