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postheadericon さようなら 医療センター(2017年04月24日)

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   さようなら 医療センター(2017年04月24日)   皿海英幸

 「いざとなったら、やはり迷うよな」福塩線始発電車の車内で考える。昨秋岡山医療センターから封書が届いた。開けてみると「あなたの担当医は医療センターを退職されました。つきましては四月の予約日には別の医師があなたの診察を行います。ご了承してください」というもの。「年度末でもない時期に何で?不思議だな」と感じた。

 岡大付属病院で「腹膜播種したスキルス胃がん」と告知され、胃・胆のう・脾臓の全摘手術を受けた。主治医が医療センターへ移動となったため、主治医をしたって私も病院を変えた。だけどその主治医が退職したとあっては必ずしも医療センターでなくてもよい。医療センターは岡山駅からバスで四十分近くかかり、運賃は三百九十円。ちょっと不便。

 リレーフォーライフで知り合いとなった医療スタッフに相談する。「うちの病院に消化器がんに詳しいドクターがいますよ。地元に帰るのなら紹介します」と言われ、その気になっていた。

 余命宣告、五年生存率の数字までいただきながら、十年以上生きている。社会復帰、職場復帰している。そのための治療をしていただき、再発・転移を防ぐため、検査をしていただいてきた岡山の医療機関。診察でよい結果をいただくと、真冬であれ、真夏であれ必ず岡山市内でジョギングを楽しんできた。思い入れが、感慨がいっぱいの岡山。その岡山と完全に縁が切れるのかと思うと感傷的にもなるだろう。

 さて、四月二十一日岡山駅に到着。「えっ!道路が濡れている。雨が降ったのだな」先日、「週間予報だと二十一日は雨の予報。受診終了後にジョグができるかな」と心配していると「大丈夫ですよ。『晴れの国岡山』と言いますよね。それに皿海さんが良い結果をもらったら雨が降るはずがないと私は信じます。ジョグを楽しんできてください」と同僚に言われた。科学的根拠のない発言だけに思いが通じ合ったようでとてもうれしい。私には力強い応援者がいる。

 八時過ぎ、医療センターにつき、機械で受付。そして外科外来の受付に行く。「皿海さんですね。CTの同意書をお持ちですか」「はい、これですね」同意書を持ってきたのでスムーズに受付を終了。一年前にいただいた書類なのでついうっかりの私がよく持参したなと自画自賛。

 採血、CTの検査を済ませ、本日担当する医師の名前と診察室番号を聞き、待合所に。途中、「医師は病棟の患者が急変したので病棟に帰られます。お急ぎの方は受付へ連絡してください。別の医師を紹介します」と連絡あり。私はどの医師に診ていただいても初対面だが、今日最後の医療センターになるかもしれないと思えば、時間が長引くのも「それも良」としよう。

 「皿海さんどうぞ」と呼ばれ、診察室へ。主治医よりずいぶん若い医師だ。「血液検査では特に異常はありません。CTですが、若干腹水がありますが、特に問題ではないでしょう。再発転移は見られません。順調ですね」「良かった」

 「ところで、あなたの主治医だったドクターは昨秋退職されました。胃がんは五年が目安ですが、術後十一年ですよね。これからは地元の病院で診てもらってもいいですし、私が見てもいいですよ。どうされますか」よし、決まった。医療センターの側から話を切り出されるのなら、迷うことなく地元へ帰ろう。岡山ジョグや観光は休日を利用して楽しむことにすればよい。

 「それでは、地元に帰り、見てもらうことにします。この病院のこの医師あてに紹介状をお願いします」とメモを取り出す。RFL活動で、多くの医療スタッフと知り合いになれたこと、本当に心強い。「わかりました。後日その病院あてに紹介状を郵送し、あなたに電話連絡をしましょう」自動支払機で精算し、病院を出る。当然のことだが、次回予約票はない。

 岡山駅に帰り、駅ビル内で昼食をすます。「さて、今日はどのコースをジョグしようか。」看護学校の先生と相談しながら、五つくらいジョグのコースを決めている。「診察日最後のジョグだから、やはり岡大コースだよな」

 コインロッカーに荷物を収め、ジョグに飛び出す。しばらく走るとお腹のあたりに不安が。今日は検査のため、朝食抜きできて、さっき昼食。いつもと違うリズムに体もついていけなかったのかもしれない。市役所が見えたので入り、トイレを借りる。えっ!「市役所トイレのトイレットペーパーにはすべて横に「岡山市役所」のスタンプあり。手がかかるだろうなあ。リフレとは違うぞ。

 市役所を出て、左に折れてジョグしていると大学病院が見えてきた。「うーん、どうしよう。用もないのに敷地に入ると不審者だよな」迷ったが、「思い出の地だ、一歩だけなら」と侵入。一歩で我慢できず、駐車場・駐輪場あたりをジョグ。さすがにTシャツ・ランパンでは建物の中にはいる勇気はない。

 「いくら私が好きだからといって、二度とこの病院に入院しようと思わないで。それは再発転移の時だから」と言った担当看護師を思い出す。よし、今日のジョグはここまでとしよう。思い出がいっぱいの岡山。後日ゆっくり休日ジョグを楽しもう。カメラ持参で。さようなら医療センター、さようなら岡山。再出発だ!