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postheadericon がん患者、家族のありようを求めて(2016年10月13日)

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   がん患者、家族のありようを求めて(2016年10月13日)   皿海英幸

 今年のがん患者大集会のテーマは「がん、新時代を生きる。~患者・家族、医療者、支援者、みな一緒に生きていこう~」である。

 私がスキルス胃がんで入院中は「家族のきずなが強まった。一つになれた」と思っていたのだが、退院すると同時に夫婦の間でいさかいが多くなった。原因はいつも同じ。

 一つ目は食事のこと。「私は胃を全摘していて食事がつらい。食べられたらおかわりをしてもいいから初めは少しだけよそってほしい。何回言ったらわかるの」妻は「手術して痩せたし、早く元気になってほしいから消化が良くて栄養のあるものをたくさん用意したの。しっかり食べてほしい。残してもいいからある程度の量はよそっておきたい」

 二つ目は生活全般にかかわること。「なんで私の身の回りのことを先先するの。できないこと、助けてほしいことはお願いするから手を出さず見守っていてよ」「父さん、今日は体調が悪いかと思ってしてあげたつもりなのに」大体こんな調子。

 そこで、インターネット中継で学びながらがん患者の家族のありようについて考えてみたいと思い、インターネット会場中国中央病院に来院(メイン会場は秋田県児童会館)。会場に入ると思ったより参加者が少ない。まあいいや。自分なりの学習をするには静かな雰囲気がふさわしいと思うことにしよう。

 定刻になり中継が始まる。まずは浜中実行委員長のあいさつ。開会式終了後は講演①~⑥、がん体験者、医療者、そしてがん体験者であり医療者の講演。その中で印象的だった部分を記す。

・がんのこと、誰にも話せずにいる人が多い、「あなたに言えてよかった」患者会に行ったらそんな人に会える。

・検査で乳がんと分かったが、気持ちの整理に時間がかかった。死を意識した。不安を受け止めてくれたのは家族だが、家族も不安だったのでは

・あなたのままで、たとえ病気になっても自分らしさを失わないで

・患者、家族の集いは大切。支える、支えられるではなく、同じ立ち位置にいたい。

・患者は聞きたくても誰に聞けばいいかわからないことがある。自分自身も成長しなければ。

・がんの死亡率は一位。医療だけでなく、研究、教育などにも力を入れてほしい。

・訪問看護をして感じること、病院では言えないこともその人のホームグラウンドでなら言えることあり。しっかり聞きたい。

・話さなくてもいい。ただともに泣くことで分かり合えることがある。特別なルールはない。

・私は医師であると同時に患者。感情論ではなく、淡々とした説明をしたい。

 次に六人のシンポジストによるシンポジウムで印象的だった部分を記す。

・単なる疾病対策ではなく、がんになっても生きていける社会を作ろう。

・がんになっても病気ではない自分を発見することも大事。

・患者、家族に寄り添う医療を。人は一人では生きていけない。

・医師は患者の声を聞いて学ぶことは大切。

・病気だけでなくその人を見ないと、その人らしい生活の支援はできない。

・親は子供にがんであることを伝えることが大切。伝えないで体調が悪くなると、「私が悪いことをしたのでは」「私は嫌われているのでは」と思うことがある。

 貴重な話をたくさん聞かせていただいた。患者、家族、それぞれの家庭により、微妙に違う悩みを抱えながらも、寄り添うように生きていく姿が感じられる。共通する事項としては、悩みあるいは戸惑いは一人で抱えて引きずらないよう、話せる場所、人がいるととても違う。気持ちが楽になるということ。あるいは話さなくても一緒に泣ける人がいればいい。

 術後十年過ぎた今だからこそ、家族のありようを今一度見直してみたい。