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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

生きがい療法研修会
 看護学生と共にがん克服体験を学ぶ
 2016年8月23日玉島市民交流センター(倉敷市)

 スキルス胃がん もうすぐ術後十年となります!

 自己紹介
 皿海英幸 広島県府中市に在住 63歳
 職業 「社会福祉法人すばる」精神障害者の就労支援施設でサービス管理責任者として勤務
 趣味 ジョギング エッセイ

 治療経過
 2006年1月、岡山大学付属病院に緊急入院。腹腔鏡による検査にて「腹膜播種したスキルス胃がん。胃の全摘手術より、抗がん剤治療を優先させよう」と告げられる。腹膜播種とは、がん細胞が胃の壁を突き破り、腹膜の中に散らばっている状態(転移)。

 2月より抗がん剤治療を開始し、中旬には退院できた。以後、地元の病院で抗がん剤治療を受ける。経過は順調で「これなら手術できるようになるかもしれない」と言われる。「今だから言うが抗がん剤が効かなかったら4月に亡くなっていても不思議ではない状態でした」と後で主治医に聞かされ、驚く。

 抗がん剤の副作用はほとんどなく、また休職中だったので、この間をうまく利用し、自分でも何かがんの治療中にできることはないかと情報収集を行う。このとき、伊丹先生の講演を聴く機会に出会い「生きがい療法」に関心を持つきっかけとなる。

 8月21日、岡大病院に再入院。自分が主治医のつもりで主治医の説明をしっかり受け、8月28日、開腹手術により、胃・胆のう・脾臓の全摘手術。病室から手術室へはストレッチャーや車いすではなく、前を向いて歩いていく。手術は成功し、ほっとしたがそれも束の間の出来事。

生きがい療法研修会
 看護学生と共にがん克服体験を学ぶ
 2016年8月23日玉島市民交流センター(倉敷市)
 9月2日の朝食より食事開始。昼前から腹痛、午後吐き気が徐々にひどくなる。開腹手術を行ったことによる腸閉そくと判明。9月9日、腸閉そくを直すための手術。このとき、「もしかしたら土壇場で底力を発揮するタイプでは」と自覚する。

 10月5日、退院。「手術は成功したが、五年生存率は10%余。元気になったという前例はほとんどない。お互いしっかり学習し、悔いのない治療をしよう」と主治医に告げられる。そこで「前例がないのなら、私が前例となるような生き方をしたい」と決意する。

 退院後の経過は順調で、術後2年目で抗がん剤治療をやめる。現在検査は1年に1度受けているが、治療は何も行っていないという状態です。今年8月28日、術後⒑年となった。

 人生最大の危機、死の恐怖・誘惑
 腸閉そくを起こした日(9月2日)、血糖値は500まで上昇。吐き気・腹痛もひどく、苦しくてたまらない。特に胃がないため、初めて味わう腸液はとても気持ち悪く、我慢できない。医師に「睡眠薬で眠らせてください」と訴えるが、薬で眠ると逆流した腸液を誤嚥し、肺炎を起こす可能性があるのでできません。今は様子を見るとき」と告げられる。「先生はそういうけど、苦しいのは私ですよ」と叫びたかったが、その元気はなかった。しばらく我慢するが、一向改善の気配が感じられず限界だ。その時、脳裏には「いっそ点滴の管を引きちぎり、4階の病室から飛び降りたら楽になるかもしれない」という考えが浮かぶ。ちらりと見た窓の前に座る妻、そして夕方交代するまでは娘が座っていた。吐き気のたび、腸液と唾液が混ざったものをトレーに吐き、口をゆすぐ。何回となく繰り返す。こうした状況に、黙ってトレーを洗い、コップに水を注いでくれた彼女たち。今、必死で私を支えるために付き添っている。「私は悪いことを考えてしまった。家族のためにも生きなければ」と思いなおした。
 「限界と感じても、昼から今まで耐えたのだから、もう1時間なら辛抱できる」「応援Tシャツの言葉を読んでいるうちは辛抱できる」「好きな深夜放送の時間までは辛抱できる」「根拠はないが、朝まで耐えれば楽になるような気がする」等。とにかく達成可能な目標を小刻みに立て、それをクリアーすることにより死の誘惑・恐怖を乗り越えた。

 フルマラソン完走
 こうした手法は何かに似ていませんか。そう、マラソン。走っていて苦しくなったら、次の交差点までは、次の給水所まではと小刻みに目標を立てながら走る。そして「ここまで来たらはってでもゴールしなければ」と思う。
 私は宮崎市で行われている「青島太平洋マラソン」フルマラソンの部を5回完走している。もちろん胃がないので、前もって食べることでエネルギーを補給することはできない。走りながら、途中で食べることによりエネルギー補給を行っている。今年も申し込みを行っている。
 また、あなた方の先輩に「神戸にも楽しいマラソン大会はあります。神戸の街を走ってください」と誘われ、「神戸バレンタインラブラン」に出場している。
 スキルス胃がんで前と同じ職場に復帰し、フルマラソンを完走、これは本当に例のないこと。「皿海さん、あなたが元気でいてくれるからスキルス胃がんの患者さんに『希望を持って治療しよう』ということができるようになった」と医療関係者に言われ、意気に感じたことがある。そこで私の体験を伝えること、がん患者の支援等の活動を行いたいと思った。そんなとき出会ったのが「リレーフォーライフ」です。

 リレーフォーライフのこと
 「リレーフォーライフ」とは、がん制圧を目指し、がん患者や家族・支援者らが夜通し交代で歩き、勇気と希望を分かち合うチャリティイベントです。今や世界25カ国で開催、日本では47か所で開催されています。私は「リレーフォーライフ・イン広島」に実行委員として参加している。 今年は8回目で尾道市の市立栗原小学校で9月⒙~⒚日に開催予定。
 「歩こう」「楽しもう」「語ろう・学ぼう」「祈ろう」と様々な参加の仕方ができるように配慮されている。私はルミナリエステージで毎回がん体験を語る機会をいただいている。
また、私の趣味であるエッセイだが、「リレーフォーライフ・イン広島」のホームページ内「がん友のエッセイ」をクリックしてもらうと掲載されている。関心のある方、よろしくお願いします。

 私の体験から皆様に伝えたいこと
 ・絶対に諦めない
前例がなければ自分が前例となるような生き方をすればいい。「諦めるより明らめる」明らめるには物事の本質を明らかにするという意味があります。本質が明らかになれば、対応法も考えられるのでは。
 ・苦しい時こそユーモアを忘れない。
 「ユーモアとは、~にもかかわらず笑うこと」
    アルフォンス・デーケンさんの紹介

なぜ術後⒑周年を迎えられたのか
・医療関係者(医師、看護師、看護学生等)との信頼関係が築けた
・基礎体力があった(治療の選択肢が増える)
・生きがい療法との出会い
・患者会、RFL等を通し、何でも話せるがん患者との出会い
・職場復帰
・家族の支援
などが考えられる。

                  
研修会資料として  皿海英幸 8月18日作成