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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    父、入院する (2016年6月16日)   皿海英幸

 一カ月くらい前だろうか、父が風呂場で転倒し、自力では動けなくなった。私は外出していたのだが、居合わせた姉が救急車を呼び、寺岡記念病院で診てもらった。九十二歳と高齢でもあり、ていねいに診ていただいたが、骨には異常がないということでその日のうちに帰ってきた。翌日は、「肩がいたい」と言っていた。「異常がない」とはいえ、転倒の際、あちこち打撲はしたのであろう。

 その後は順調に回復しているように見えたが、運動量は以前より徐々に減り、ベッドで横になって過ごす時間が増えた。そのため、「おなかがすかない」と食事の量が減っていった。昼食は両親だけなので、食事の時間が大幅にずれたり用意したものを食べなかったりという日があった。なんだか生きる気力が減っているように見え始めた。

 これではいけないと思い、時々昼食時に職場を抜け出し、自宅で両親に声をかけて一緒に食べる日を設けた。胃を全摘している私には負担に感じるときもあったが、何とかしなければと頑張った。私の初孫の写真をパソコンで見てもらうことも試みた。

 「早く帰った日には、一緒に歩こう」と話し合っていたところ、「腰が痛いから今は歩けない」という答え。夜中、トイレに行っていて、またもや転倒し、腰を打ったという。「それでは」とベッドのそばにポータブルトイレを用意した。「ポータブルに座っても、いつもと感触が違うので出るものも出ない」とトイレに行こうとしてまたもや転倒。

 何回転倒したのかわからない。すでに足の筋肉は衰え、自力で立つことが難しい状態。三~四日の内にあれよ、あれよというくらい衰えている。ベッド傍のポータブルトイレに座るのも私が抱きかかえないとどうにもならない状態。母や妻では一緒に倒れる可能性が強い。食事もベッド上部を起こしてそこで食べる。

 どうしよう、六月に介護保険の認定調査がある。アンケートには記入したが、主治医に見てもらう必要がある。救急車というわけにはいかないし、かといって自家用車では乗り降りができるだろうか。ケアマネさんのアドバイスにより、社協で車いすを借り、それを使用することで車の乗り降りをクリアーすることに。私と妻が同行すれば何とかなるだろう。

 「もう家で見ることは無理でしょう。入院を前提とした紹介状を書きましょうか」と主治医。「明日起床しても今と同じ状態なら、お願いします」と応じる。父の入院の説明し、説得する時間と手続きが必要。「ベッドの空き具合により、必ず入院できるとは限らないので、ケアマネさんにショートステイの空き状態も調べてもらってください。場合によっては福祉の制度を使いましょう」

 翌日六月十日、職場を早退し、三時前に府中市民病院へ。主治医が手配されたのか、入院自体はスムーズに。でも問診、検査等手続きに時間が。頭痛で寝込んでいる母のことも気になる。今日の流れを説明されないので、余計待ち時間が長く感じる。持病のある娘も最近絶不調。なんだかこの三人、誰かが調子を崩すと「私の方に注目して」と訴えるように競ったように体調不良になる。分かっていてもこうした負のトライアングルに振り回される私たち夫婦。森田療法では、病気も自然現象の一つととらえるのだからと思い、頑張るしかない。明るいトライアングルにそのうちなれば。

 十七時過ぎ、やっと病室に上がり、入院に際しての書類や持参物の説明。今まで父が入院に際しては「高齢者が入院されると認知症が進むケースがあるので、息子さん、夜は止まってください」と言われていた。昨年、市民病院で大腸がんの手術を受けた際もそういわれた。今回は「拘束に同意する書類にサインすれば、夜泊まりに来ることまでは求めない」とのこと。

 何やかにやで病院を出たのは十九時になっていた。私は本宅に帰り、母と遅い夕食を。妻はアパートで娘のご機嫌伺いに。しばらくは気ぜわしい日が続くことであろう。

 父がどこまで回復して退院するかはまだ分からないが、年齢が年齢だけに家族の負担が増すことは間違いない。フルマラソン、もう無理かな。胃を全摘しているだけにフルを走るとなると計画的な練習が必要。家族の状況を考えるとジョグの時間は減らさなければならない。

 まあいいか。大会に参加するのは諦めても、趣味として時間を見つけて一人でジョグを楽しむことにしよう。介護のためにも趣味を続けるためにもまだまだ体力維持は必要だ。

がんに関する行事も今まで同様に参加することはできないだろう。選別が必要かも。両親の状況によっては不本意だが不参加も。限られた状況の中でいかにベストを尽くすか、これからのテーマだな。

ところで、六月十日は結婚記念日。そのことはすっかり忘れてしまって妻に申し訳ない。