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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   やっぱり無理かな(2016年5月21日)   皿海英幸

 「急に暑くなったね。こう暑いと体がだるく感じるよ」「アイスクリームが食べたいな」五月中旬ともなれば、利用者間でこんな会話が交わされるようになる。

天気予報でも「暑さ対策と、紫外線対策が必要です」と言っていた。もう無理だな。秋まで待つしかないな。

 職場で私は「軽スポーツ」担当職員として計画立案を行っている。五月はウォーキングの予定だった。

「こんなのが入っていましたよ。みんなで歩いていけたらいいですね」新聞折り込みを持参し、皆に見せる職員。見ると新市町でこいのぼりをたくさんまとめて泳がせているところがあるという。

「よし、これだ」ウォーキングは大儀がる利用者が結構いるので興味を引きそうな目的地を提案する必要あり。

「新市と言っても場所はどこ?」「はっきりとはわからないのです。調べておきます」「よろしく」

 後日、場所は備後一宮近くと分かり、私がジョギングで出向き、空を泳ぐ鯉のぼりの写真を数枚写す。

「五月の軽スポーツはウォーキングを提案します。行先は新市町の鯉のぼりがたくさん泳いでいるところです」ある程度の賛同を得たので職員で話し合いの結果決定した。時期は連休明け。

 「歩きましたが、こいのぼりはいませんでした。午前五時半では早かったかな」連休中、アルミ缶回収の準備をしていると突然のメール。

職員が連休を利用して職場から目的地まで試走ならず試歩してくれた。なんと協力的な職員。感謝感激だけど、連休中とはいえ五時半は早い。それに鯉のぼりがいないなんて。

 気になるのでアルミ缶回収後ただちに車で現場に。「いた、いた鯉のぼり」たくさんぶら下がっている。いかに何でも五月五日より早く片づけることはあり得ない。後日、図書館で新聞折り込みを探して確認すると五月十日までは大丈夫。やっぱり。

 えー残念だな。軽スポーツ当日の天気は雨。それでも「昼までに雨足が弱くなったら」と期待したが駄目だった。期待してくれた利用者、朝早くに歩いてくれた職員には申し訳ない気持ちでいっぱい。でも天気には勝てない。

 ところで、なぜ私がウォーキングにこだわるのか。ウォーキングだと、外出するので、天候に影響されるということは避けられない。そんなリスクをおかしてまでなぜ。屋内で行うよう企画すれば、心配はないのに。

 もちろんそれには理由がある。まずは、研修会に行った際、たいてい言われることがある。

 「施設職員さんは利用者の体力をつけることをまず考えてください。技術的なことはA型作業所なり、企業が障害者向けのプログラムを作り、待っています。

でも、毎日通うだけの体力が続かないと、話にならないのです。どうぞ体力をつけてください」希望する利用者にはできるだけA型作業所なり、企業へ就職してほしいと思う。

 もう一つの理由、それは私のがん体験に由来しています。初めて岡大病院に入院し、全身の検査を受けた後言われました。「あなたは今手術できる状態ではない。抗がん剤の治療を優先しましょう。抗がん剤の効果がなかったら、余命三カ月です。春になったら亡くなっていても不思議ではありません。でもあなたは基礎体力があるので、もしかしたら」

 「手術は成功しました。でも腹膜種播種したスキルス胃がん。元気になった人はいないと言ってもいい状態ですね。五年生存率は一〇%より少し上でしょう。でもあなたは基礎体力があるのでもしかしたら」ごくわずかでも、可能性を信じ、希望をもって生きるのみ。基礎体力を信じて。

 こんな私だが、現在術後一〇年目が間近となっている。基礎体力がものを言ったのだろうか。

  そしてがんは成人の二人に一人。私たちの施設利用者でも高齢化に伴い、がんになる確率が高まっている。がん体験者の私としては、利用者も職員も基礎体力をもっとつけてほしいと思っている。そのためには有酸素運動であるウォーキングを積極的に取り入れたい。

どうか皆さん、秋にはウォーキングを楽しみにしましょう。どうぞよろしくお願いします。