2009メインメニュー

postheadericon またやっちゃった(裏報告書)

2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   またやっちゃった(裏報告書) (2016年1月25日)     皿海英幸

 「当日の日程表・会場までの地図・受講票・高速バスのチケットに時刻表、よし、すべてそろったぞ。これを目立つ『笑点のファイル』にはせておけば大丈夫。いや待てよ、バスのチケットだけは財布に入れておこう」

 一月十六日「自傷・自殺の理解と対応」の研修会に参加予定だが、十二日の段階で準備はできた。あとは風邪などひかぬよう体に気を付けて当日を迎えるだけだったはずだが。

 「ない、ない、どうしよう」前日十五日の夜、準備物を確認していて笑点ファイルがないことに気づく。「あっ、しまった」ファイルには研修会に持参するものだけでなく、ほかの書類もはせていたので、職場に持参しファイルごと忘れて帰ったのだ。私は職場の鍵を持っていない。鍵を持っている管理者に連絡を取るといってもすでに二十一時を過ぎている。

 他のものは要点を手帳にメモしているから何とかなるが、受講票をどうしよう。「必ず持参してください」と記入してあった気がする。まあいいか。ゼッケンナンバー通知票を忘れてマラソン大会へ行き、再発行してもらったことがある。今夜は少し酒を飲み、ぐっすり眠ることにしよう。

 翌日早朝、カブを飛ばして市役所前バス停へ。「寒い!」 余裕で高速バスへ乗る。広島が近づくにつれ胸がドキドキ。「必ず持参」と記してあることは持参しなかったら受講できないということもあり得るのか。マラソン大会と研修会を同列に考えてはいけない気がしてきた。少なくとも自殺願望の相手に対しては細心の注意が必要。ついうっかりは許されるだろうか。

 そもそも今回の研修、管理者が「誰か受講してください。私たちの施設に必要な研修です」と訴えたが誰も手をあげなかった。そこでやむなく私が手を上げた。私にとっても必要な研修だと思うところがあった。できれば若い職員に手を上げてほしかったのだが。

 そんな状況があっての研修なのに、受講できなかったらどうしよう。恥であり、ほかの職員に申し訳ない。「いっそ自殺しようかという気分だよ」とは自殺対策の研修だけに言えないぞ。それにかねがね妻は「腹膜播種したスキルス胃がんを乗り越えた奇跡の人、交通事故とかしょうもないことで死ぬわけにはいかないね。」と私に言う。自殺はもってのほか。受講できないにしても資料だけはいただいて帰ることができればいいのだが。

 「申し訳ありません、受講票を忘れてきたのですが」会場受付で言う。「そうですか、じゃああちらのテーブルへ行って名前を告げてください」別のテーブルに回され、再発行の手続き。「やれやれ、助かった」

 若い女性に丁寧な対応をしていただき、何か得した気分。いや、そんなことを言っている場合ではない。今回は特にしっかり学習して帰らなくては。職場のため、再発行してくださった主催者のため。いやいや、自殺願望のある人にきちんとした対応を取るために。

 でも、「研修を受けたけど、役に立つケースがないな」という状況が続くことが最も望ましいのかもしれない。

 

   うーん、まだまだ

 一月十七日、旭学区ロードレース大会の日。町内会対抗駅伝がメーンだけれど、私は主治医に「人と競争するのはダメ。マイペースで楽しむことができるのならいいですよ」ということでスポーツの許可をいただいている。そこで駅伝ではなく、ロードレース一般の部(中学生以上)に参加。

 ゴールすると「三位入賞です。名前を教えてください」と大会役員。

 しばらくして「中学生を見落としていました。あなたは四位です」「えー、残念。もうちょっと頑張ればよかったのかな」

 ちょっと待って。マイペースで走り、参加できることを楽しむはずじゃあなかったの。

 スタート時点では「マイペース」と自分に言い聞かせて走り始めるが、ゴール目前になって、競り合っていたら、つい「ラストスパート、気合だ!」となる私。人ができていないな。でもジョガーの本能がそうさせるのかな。