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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    師走のアート展   皿海英幸
 「今、作品の解説が始まったばかりです。よろしかったらご一緒に」「ありがとうございます」十二月二十一日(日)福山美術館で行われている「あいサポート展」会場受付で声をかけられた。早速解説を聴きながら作品を鑑賞する。
 「あいサポート展」とは何か。「広島県内の障害のある方の芸術活動を応援し、障害のある方への県民の理解を深めることを目的としたアート展」とパンフに記してある。
 審査員加藤宇章さんによる解説は同時開催の「シュテファン・ティエルシュ」作品展から始まった。「幼少期にいじめなどの経験をし、対人恐怖症となったドイツ出身のシュテファン・ティエルシュさん。治療の一環で創作活動をはじめ、絵画が生きがいとなった彼は現在年に数回ドイツと台湾で個展を開くほど、その活動の幅は広がっています。今年七月の来日に合わせて創作された代表作の「森」を含めた二十五点を、あいサポートアート展と同時展示します。」
 私が無知なだけなのかもしれないが、色々な治療法があるものだ。ただ、自分を表現できる物に出会い、そのことにより外に向かって心のありようを発散することは、どんな症状であれ、治療となると思う。思いがありながら、ただ、内部にため込むのはよいことではない。
 解説の中で、「絵画は結果としてできるものです」という意味のことを言われた。これをどう解釈すればいいのか。まず、伝えたいもの・表現したいものが心の中にわきあがる。それを表現したものが結果として絵画になると私は考えた。だから絵画はそれぞれ何らかの主張があると思って鑑賞するのはどうだろう。余談だが、わきあがったものを言葉で表現すればエッセイとか小説といった類になるということだろう。
 いよいよ県内作品展へと移動。ここで目につくのは「はじける!」(あんずの家)利用者による共同作品。ほかの作品より大きな作品だ。入賞作品は巡回展となるので、どこの会場でも展示でき、移動に困難を伴わないよう、作品の大きさに制限がある。「制限を取っ払い、自由に画いてもらったら」と解説者。ここ福山美術館での展示ならもっと大きくても可能。そして利用者の思いをぶつけて表現するには大きさに制約がない方がいいように私も思う。
 ただ筆で画くだけでなく、キャンパスに絵の具を絞り出し、爪ではじいたり、穴をあけた缶に絵の具を溶いたものを入れ、垂らしたりという手法も使っている。そのためか、明るさ・力強さが感じられる絵である。「あんずの家」という施設に興味を持つ。
 次にさをり織りの展示を観る。用意された縦糸に、色・太さを自由な発想でおりこむ。創作される人の個性により、独特の作風となる。
 陶芸作品では来年の干支「羊」が多数展示してあったが、それぞれ個性豊かというか、違った表情をしていた。また作品の中には、自作の絵画の上に陶芸品を置いて展示してあるものもあり、面白い試みだと感じた。
 他にもギターに絵を描いたものもあった。自分が使っていたギターが使えなくなったが、愛着があり、絵を描くことで作品として残しておこうという試みなのかなと感じた。それにしても発想がユニーク。絵を描く材料は必ずしも平面でなくてよい。自分が表現したいと思うものがあれば、どんな組み合わせもありだ。このあたりは障害のある方のとらわれない自由な発想というものか。
 心を和ませる作品展ではあったが、来場者が少ないのは残念。「日曜日の午後、解説付きでゆったりとした時間を過ごせるので、参加者は多いのでは」という私の予想に反していた。
 私たちの施設で芸術活動としては絵手紙に取り組んでいる。絵手紙も美術館で展示することができたらよいと思った。解説者によると「こういう展示をするのは、各地・各施設の作品を鑑賞することで刺激し合い、技術・表現力をより高めていけたら」という意味も含まれている。
 師走の休日、ゆったりとした意義ある時間を過ごさせていただいた。