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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    里帰り        皿海英幸
 「乗客の皆さま、左方向をご覧ください。本日は富士山がくっきりと見えます。新富士駅から三島駅の間で楽しめます」新幹線の車内アナウンスが流れる。十二月六日(土)六時前に自宅を出て、福塩線・新幹線と乗り継ぎ、三島駅へ。そこで御殿場行きのバスに乗る。目指すは「御殿場荘」復生あせび会主催による「寛ぎの集い」(難病者の行事)に家族会員として参加する。
 「あれ、通行止めだ、どうしよう」バス停で降りたが、黄瀬川にかかるいつもの橋が渡れない。きょろきょろすると、少し川下に大きな橋がかかっている。黄瀬川は護岸工事をしており、付近の景色が変わりつつあるようだ。
 「こんにちは。お邪魔します」「いらっしゃい、久しぶりね」玄関をはいると佐藤会長が笑顔で迎えてくださった。メールでのやり取りはしているが、直接お会いするのは何年振りだろう。がんの手術に際してはお世話になったが、すっかりご無沙汰してしまった。
 広間に荷物を降ろすと本棚から難病に関する本を取り、読書を始める。難病者の集いだから、食事の時間が決まっているくらいで、基本的には自由交流。体調に合わせて自由に過ごす。
 前回までは建物の前にある芝生広場で富士山を見ながらジョギングを楽しむことが多かったが、腰の治療中なのでそれは控える。読書が一段落したら散歩に出る。共同墓地へ行き、「あせびの墓」に手を合わせる。
 「久しぶりに御殿場に帰ってまいりました広島の皿海です」夕食を取りながらの自己紹介が始まった。共通点は「難病」だけだが、あせび会はまるで実家に里帰りしたように来る人を温かく迎えてくれる。参加者三十七名中には福岡・長野といった遠方からの参加者もいる。
 ところで私の隣席は難病により聴力が落ちた人。そのため時々手話を交えながら小さな声で話される。私も一生懸命手話を思い出しながら話をする。がんの告知を受ける前は手話サークルに属して活動していたが、術後は全く手話を使っていないので囁くような声と口の動きが頼り。
「あせび会だより」に載っている私のエッセイの読者だったこともあり、結構会話を楽しめた。
 その後はビンゴゲームによるプレゼント交換。私の用意したプレゼントは府中みそを使ったドレッシングをトートバッグに入れたもの。皆さんクリスマス風にラッピングしたものが多いだけに質実剛健は目立つ。
 食事会が終了すると、希望者による「御殿場高原ビール園」のイルミネーション・光のトンネルを散策。そして二次会へと。私はいつも二次会用に握り竹輪を持参。関東の人は本物の竹を使った竹輪は珍しい。そして「切ってつまみに」と渡すと、「これ、どうやって切るのかな」と女性が戸惑う表情を見せるのが楽しみ。私が竹を抜くと「へえー」。実はこの二次会が貴重な時間。飲みながら近況報告をしたり、悩みを相談したり。本音をぶつけあう。
 七日、気持ちよく起床。よく晴れており、風もない。外でのお餅つきにぴったりだ。八時より準備に取り掛かる。関東では餅を伸ばして切りもちでいただくのが主流。でもお飾りはさすがに丸餅。ここは私の出番と思い手伝う。
 お餅つきの途中、あせびの家談話室でお茶をいただく。心が落ち着いてくる。ここ御殿場では時間がゆったりと流れているような気がする。
つきあがった餅は納豆・大根おろし・黄粉等をまぶして食べる。そしてキノコ汁も添えられる。これがまた口に合う。
 しっかり腹ごしらえをし、お土産用のお餅もいただいた。後ろ髪を引かれるようだが、御殿場荘を後にする時間だ。今回、久しぶりに再会した人たちに温かく迎えていただき、たくさんの元気をいただいた。またいつの日か、時間がとれたら御殿場に里帰りしたい。