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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   念ずれば
 「皿海さん、こんにちは。久しぶりですね」突然なのでびっくりし、声の方に向く。「私、今日はお手伝いに来ているのです」声の主は手話サークル同期生Kさん。私に向かって微笑んでいる。
 私ががんになる前だから十年くらい前になるのだろうか。二人で先輩の特訓を受け、府中市健康&福祉祭り開会式で手話通訳として、個々府中市文化センターの舞台に立ったことがある。もちろん事前に原稿がもらえる部分だけなので、短時間ではあるが、それでも緊張していた。
 がんになり、治療中は手話を全く使わなかったので、ほとんど忘れてしまった。結果としてサークルから距離を置くようになり、当時親しくしていた人たちとも何か行事の時に偶然会うだけという状況になった。
 「本当に久しぶり。元気そうだね。近いうちにエッセイを送るから、読んでください」会えば懐かしさがこみ上げ、話したいことはある。だけど私語はそこまで。今日十月四日は「府中市健康&福祉祭り」開催日。本日のメーン行事「せせらぎコンサート」に参加のため、職場の利用者と共に来場。私は足に不安を抱える利用者を介助中。
 私たちの職場はハンドベル演奏で出場。「本番に強い」とでもいうのだろうか。昨日のリハーサルより上出来。うまく息があっていた。私も舞台裏でKさんが応援してくれていると思うと気持ちよく演奏することができた。
       
 さて七日(火)最近記したエッセイをパソコンから取り出す。「先日、偶然会うことができました。びっくりしたけどうれしかったです。また、どこかで偶然会えるといいですね」と記したメモを添え、郵送する。
 十日(金)市役所前より、リードライナーに乗車。「皿海さん、おはようございます」えっ! Kさんが微笑んでいる。メモに記したけれど、こんなに早く偶然が訪れるなんて。「おはようございます」と挨拶し、ちょうど後ろの席に座る。「エッセイ、昨日届きました。ありがとうございます。今日はどこへ?」「年に一度の広大眼科受診です」
 後ろ向きに身体をよじって話をするのは難しいと思うけどね。あなたの隣の席のかばんを網棚に移動させるなり、少しずらしてくれればすぐに私は横の席に移動しますよ。でも同期生とはいえ、年齢差のある女性。私から申し出るのは、やめておこう。今日会えたことを素直に喜ぶことにしよう。
 こんなに早く偶然がやってくるなんて、私の思いが強かったのだろうか。それにしても行きのバスで会えてよかった。目の検査なので、瞳孔が開く目薬をさしてもらうことになる。帰りのバスだとその関係でKさんの笑顔がおぼろげにしか見えないであろう。
 さて、目の検査だが、医師は「特に変化はないようです。安定した状態のようです」と言われた。だけど私としては視力検査で、左目が少し良くなったように思う。昨年だと「右が切れている」「下が」と言う以前に検査のボードが見えず、隣のボードを探していて注意を受けた。今回、切れた個所はともかくボードは確認できた。これはもしかして朝Kさんを見つめたことで、目が澄んだ状態になったということか。
 さて、「偶然会えるといいですね」と記したメモを送ったら会うことができた。じゃあ今回もその言葉を記してペンを置くことにしようか。でも、偶然に会えたのだから、次は必然として会いたいという気持ちもある。とりあえず、定期的にエッセイを読んでもらうことを考えてみよう。
 このような感傷的な文章を記すのは、秋の夜のなせる技なのでしょうか。