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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   一日だけの参加です 
 「よし、気合を入れるためにもマラソンシューズで行こう」九月十四日の七時過ぎ、自宅を出て、JRで尾道へ。と言ってもマラソン大会ではない。がん啓発サポートキャンペーン「リレー・フォー・ライフジャパン(RFL)広島」に実行委員として参加。RFLは十四~十五の二日間開催されるが、私は家庭の事情により、十四日のみの参加。三月から会議を重ね、準備をしてこられた他の実行委員に申し訳ない。せめて十四日は気合を入れて頑張ろう。
 九時、駅前港湾緑地で当日の打ち合わせ。そして準備開始。「力のある人、ビルから本部テントへ荷物を運んでください」もちろん立候補。会場近くの高層ビルへあがる。景色がいいけど、足に震えが起こりそう。もちろん私は高所恐怖症。景色を楽しまず、作業に専念できるという良い性格。
 荷物を運ぶと、次は日本対がん協会のがん啓発メッセージカードを海側のフェンスに掲示。枚数が多いのだが、途中から尾道市健康推進課の方やボランティアの方が加わってくださった。
 時間も迫ってきたので、本来の仕事、サバイバーフラッグ作製の準備に取り掛かる。これは実行委で用意した無地の布にがん闘病者・がん体験者がペンキで色をつけた手形を押し、メッセージを記入してもらうというもの。開会式直後の一斉行進で先頭を歩くフラッグ(旗)として使用するので、二枚のうち一枚は開会式までに作成しておかなければならない。
 今回は受付が事前に申し込みをされた人の受付、当日受け付け、マンモグラフィ―受け付けと国道の北と南に複数あるからか、フラッグ作製の出足が悪い。今までだと総合受付の隣にフラッグのブースがあり、自然な流れで作成に協力していただいた。実行委員も北・南両側に控えている。そこで私が北・南両会場を走り回り「フラッグ作製に協力してください」と呼びかける。
 会場が二つのためか、本部テントは南側にあるが、実行委員は手薄になりがち。そんなとき、なぜか私に問い合わせがあることが多い。だけど私の一存で対応できることではないので、両会場を走り回って担当委員に連絡。マラソンシューズでよかった。もちろんケータイで済ませたケースもある。
 皆さんの協力で開会式までにフラッグが一枚完成する。良かった。今回、久しぶりに一斉行進でフラッグを持って行進。先頭集団として歩くので、気恥ずかしいような、誇らしいような気分。一周すると再びフラッグ作製ブースへ帰り、会場へ来られた人たちに協力を呼び掛ける。
      
 時々会場内を移動し、様子を見ると同時にフラッグ作製への協力を呼び掛ける。そんな中で府中の知人に出会った。仕事の関係での知り合いだが、写真展を通し、参加を呼び掛けたところ、来て下さった。「府中の人ももっとたくさんの人が参加すればいいのに」から始まり、今日は個人的なことも話し合うことができた。収穫だ。
 さて、私のもう一つの役割はルミナリエセレモニーでのスピーチ。第一回のRFL以来連続六回目のスピーチ。「じゃあ慣れているだろう」と思われるかもしれないが、そういうものではない。やはり私は上がり症。ただ、出足がうまく行ったら後は落ち着いて話ができるという気がしてきた。
 私のがん体験を語った後、「インターネットを使えば,RFLといつでもつながることができます。うまく使って下さい」と語ったのが今回の特徴かと思う。「RFLは、二十四時間がんと闘う方の勇気をたたえ~」とあるが、同時に年中がんと闘っている人がいる。開催日だけでなく、いつでもつながることができるという実感は、辛い思いをしながら治療中の方には大切なことと思う。また、今回のセレモニーでは兵庫県の方二名がスピーチされたのが特色か。
 最後にスピーチされた兵庫県の方と後で話す機会を得た。この方はフルマラソン107回完走されている。その方が私に言われた。「胃のない人には、その人でなければ分からない辛さ、苦労があると思います。どうぞ走り続けてください。あなたの場合、回数じゃありません」やはりがん体験をしたアスリートゆえの分かり合える部分があるようでジーンときた。
 最近は「がんになってマラソンを始めた」「登山を始めた」という話に接することがある。がん患者のモンブラン登山を成功させた「生きがい療法」の伊丹先生はおっしゃっている。「がん患者は登山をすればいい。マラソンをすればいいと言っているのではありません。生きがい、あるいは希望を持つことが大切だと言っているのです。その人にあったモンブランを見つけてください」と。
 「RFLに参加し続けるというのがモンブランだ」という人がいてもいいのだ。
 「皿海さん、スピーチ、板についていますね」とマイクを持つ真似をしながら声をかけてくださったのは日本対がん協会Nさん。「ありがとうございます。いつも同じ話ですみません」「そんなことありません。『今年も同じ話を聞けたから元気をもらって帰る』という人がいると思います」という会話をした。
 私は自分から立候補してスピーチをしているわけではない。私の体験談を必要としている人がいると依頼されればスピーチをする。上手なスピーチ、板に付いたスピーチを意識するようなことはない。できるだけ誠実なスピーチを心掛けている。だからスピーチをほめられると若干の戸惑いを感じた。でもNさん、有難うございます。
 それにしても、今回のルミナリエステージ最大の主役は広島ウォーキング協会理事Fさんだったと思う。今年夏の広島市における土砂災害で命を亡くされた。ところがRFL前日の十三日、RFLの表彰メダルと周回用スタンプカードが見つかったという奇跡のような話。会場に届けられたメダルとカードを示しながら実行委員長が紹介すると、会場は大きな拍手で包まれた。Fさんは今回も参加したいという気持ちを強く持っておられたからこのようなことが起こったのではと思う。
 今回二つの会場となったため、しまなみ交流館で行われたステージの催しにはほとんど参加できなかった。だけど、「足もみでQOL改善、あなたもできる足のケア」と題する足もみ隊Hさんの講演は聴くことができた。便秘になってもすぐに薬に頼らず、背筋を伸ばして歩くこと、足裏の中央部を握りこぶしで刺激することにより内臓の働きを良くすることをまず行うという件、参考になった。両親に勧めてみよう。
 Hさんといえば、東京在住だけど、実行委員として私のエッセイを読んでくださっている。RFLで会うとエッセイの内容を話題にしてもらえるのでとても親しみを感じている。
 いつもなら、夜は周回コースを歩きながら多数の方と話をする。私はステージでスピーチをするからか、あるいは背中に「スキルス胃がんに負けないぞ!」と記したゼッケンをつけているからか、多数の方に話しかけていただく。それを楽しみにしている。夜はほかに催し物がないこともあり、じっくりと話し込むことが多い。
 だけど今回は今日中に帰らなければならない。明日は親せきから満中陰の法要に招かれている。亡くなられて何年もたっているのなら事前にお参りし、当日は失礼することも考えられるが、満中陰とあれば優先させなければと思う。心残りではあるが今回はこれにて失礼させていただこう。