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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    来年もよろしくお願いします
 八月二十六日、倉敷市「玉島市民交流センター」にて「看護学生と共にがん克服体験を学ぶ」と題するセミナーに講師として参加予定。「皿海さん、若い女性と一緒に学習。年に一度の楽しみですね」周りの人は冷やかし半分に声をかける。私は「年の離れた彼女たちにどう話したら思いが伝わるだろうか。学生は卒業し、毎年変わるとはいえ、同じ内容でいいのだろうか」と躊躇することが多い。
 だけど今回は大丈夫。私の体験を話した後、「がん患者はみなさんドラマをお持ちです」と言い、ご自身のがん体験を生かし、医療用帽子の店を開いたTさんの話を添える予定。例年より胸を張って参加できそう。
 さて当日。開会五分前になると看護学生のほとんどが両手を頭に当てる。マッサージをして血行を良くするのかと思うと、そうではなかった。皆ポニーテールのように髪を束ねている。なるほど、ナースキャップを使わないのが主流となった現在、授業あるいは実習時は髪を束ねるのがエチケットか。
        
 開会するとまずはすばるクリニック伊丹仁朗医師が「生きがい療法」と「がん難民」等現在のがん医療の問題点を分かりやすく説明された。
 次はいよいよがん克服体験談、私の出番だ。
 「府中市から来ました、お皿に海でサラガイと言います。だけどときどき私のことを血海(チノウミ)と書く人がいます。私は平和主義者、血の海は避けたいと思います。」(笑)いいぞ。自己紹介で笑いがとれたらこっちのもの。後は落ち着いて話ができるはず。
 続いて治療経過、フルマラソン完走等、気持ちよく話すことができた。
 看護学生の皆様に伝えたいこととしては
・絶対に諦めない。「諦める」より「明らめる」「明らめる」には周りを明るくすること、物事の本質を明らかにすることという意味がある。本質が明らかになれば対処法も考えられるのでは。
・がん患者にはみなさんドラマがある。患者と接するときはそれぞれの方のドラマをじっくり聴くよう心がける。
ということをお願いし、体験談を締めくくった。
 次は三班に分かれてのグループワーク。「皿海さんの講演、はいりがよかったですよ。血の海だなんて、笑っちゃいました」今日の司会者、私と息があっているのか、ノリがいいのか、気持ちよく話をさせてもらった。それでは学生たちとのやり取りのうち、印象に残っているのを記してみたい。
Q「生きがい療法」を学んで、自分がどう変わったと思いますか
A生真面目で思いつめる性格でしたが、悩むのは期間限定にし、できるだけ周りの人と相談し、預けるようにしています。そして、目標を持って生きるようにしています。そのためか「がんになって明るくなったね」と言われています。
Q今日の目標は
Aあなた達に私の思いを伝えること。そして私のスピーチで笑ってもらうことです。生きがい療法では「笑わせ療法」も大切です。
Qフルマラソンの途中で、なにを食べているのですか。
A練習時、カロリーメイトを食べていました。本番でもウエストポーチに用意していたのですが、給水所には一口大のバナナと黒砂糖があり、沿道で応援する人たちからはクッキー、飴、御汁粉等差し入れがあったので、用意したものはほとんど食べていません。
Qフルマラソン出場に家族の反対はなかったのですか
Aホノルルマラソンのニュースを見ていたら、有名人が六時間かけて完走というのがありました。妻が「父さん走るのが好きでしょう。六時間でもいいのなら出場すればいいのに」と言ったのがきっかけ。家族は応援してくれています。むしろ、最初は「胃のないものが走るなんて」と私が慎重でした。
Qがんになる前にフルの経験はありましたか。
Aハーフは走っていましたが、フルは未経験でした。
Q入院中、看護師とのエピソードは
A担当看護師に「担当とは何ですか。他の看護師との違いが分かりません」と言ったら、「私たち、チームを作ってローテーションで看護しているの。患者には担当が何か分かりにくいですね」という返事だった。その夜「勤務が終わったから、少し話をしましょう。あなたに『担当って何』と言われたのはショック」と言われました。以来、勤務終了後、しばしば話に来られた。退院時、「大学病院は患者の回転が速いから、本音で話す関係にはならないけれど、あなたとは本音で話せてよかった」と言ってもらえました。
     
Q話し合って具体的に良かった点は
A血糖値を測る時間ですが、一日の最終は消灯後でしたが、医師に変更を働きかけてもらえ、消灯直前になりました。助かりました。
 余談になりますが、手術の前後、あなた達のような、看護学生が実習として私に着いてくれました。実習最後の日、あいさつに来た彼女が言いました。「皿海さん、時には無茶を言って看護師を困らせてもよかったのですよ。我慢ばかりじゃダメ」これを聞き、根拠はないが「彼女はきっと立派な看護師になるだろうと思いました。
Q何故、自分のがん体験について講演をされるのですか。
AM市にある病院のがん患者支援室担当看護師に言われたことがあります。「皿海さん、有難う。あなたが元気でいてくれるから、スキルス胃がんの患者にも『希望を持って治療をしようね。元気に社会復帰した人はいますよ』と言えるようになった」と言われ、意気に感じました。私の体験で役立つのなら、依頼されれば話に行きます。
Q生きがい療法で学んだことを、今後どのように使用されますか
A私の職場は障害者が利用する福祉施設です。不安への対処法、短期目標・長期目標の立て方については生きがい療法を生かした形で話し合っていきたいと思っています。
 他のもいろいろ質問があり、気持ちよく話すことができた。最後の締めくくりとして司会者が言った。「今日は体験に基づいた話をいろいろ聞かせていただきありがとうございました。来年もぜひ、私たちの後輩にも皿海さんの話を聞かせてやってください。来年もよろしくお願いします」全く感無量。最高のほめ言葉だ。私からも看護学生に言いたい。「今日はありがとうございました。来年も機会をいただけたなら、一生懸命お話しさせていただきます」