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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   暑(熱)かった週末     皿海英幸
 「しまった、間違えた。まあいいか、車内で買い替えよう」五月二十三日早朝、高木駅券売機で福山行きの切符を買ってしまった。今日は岡山医療センターでCTによるがん検診。そして異常がなければ上京という予定なのに。先のことが気になり、ついうっかりやってしまったようだ。
 「皿海さんどうぞ」よばれて診察室へ。「CT・血液検査、ともに再発・転移の兆候は見られません。順調です。今後は年に一回岡山での受診ということにしましょう」「ありがとうございます。」診察を終え部屋を出ようとする私に医師が声をかけた。「これからは暑くなります。マラソンの時は水分補給をしっかりと」「はいそうします」これが医師とがん患者の会話かな。
 岡山駅ビルの食堂で少し早めの昼食を取り、新幹線で上京。五~六年ぶりの東京だが、無事大井町のホテルに到着。明日に備え、早めに就寝。
 東京の夜明けは府中よりずいぶん早い。七時にホテルを出て、りんかい線で東京テレポート駅へ。そして「お台場チャリティーランフェスタ2014」の受付場所セントラル広場へ。駅を反対側へ出たため、迷子になりそうになりながら時間をかけて到着。本日二十四日(土)は「防ごう精神疾患、増やそう就労支援」を掲げ、日本で初めて精神障害者支援のマラソン大会「ミラソン」が開催される。「ミラソン」とは「未来+マラソン」で「未来に向かってみんなで走ろう」という意味。精神障害者支援施設職員であり、胃を全摘しているにもかかわらずマラソンを趣味とする私が参加しないでだれが参加するのだという心意気だ。
 二月末、交通事故にあい、むちうち症でジョギングを中止した。四月になり、再開するにあたり、何か目標をと思っていた時期に出会った大会でもある。府中から東京は遠く、交通費が高くつくが、慰謝料をしっかりもらえば大丈夫という計算。
 受付を済ませて着替える。この大会のシンボルカラーであるピンクのアイテムを身につけて走るというのがルール。乳がん患者会と親しい私はピンクなら大丈夫。「ピンクリボンdeカープ」と記したTシャツ着用。
 会場を見渡すとピンクのTシャツが一番多いが、ピンクの帽子・リストバンド・ソックスと色々なアイテムがある。「えっ!」「自分はピンクのものを持っていないから」と顔にピンクの絵の具を塗りたくっている人もいる。
 「かわいいTシャツですね。これも売っているのですか」若い女性に声をかけられる。「いえ、これは広島から持参したものです」「そうなのですか。私も広島出身なので『ピンクリボンdeカープ』いいなと思います」彼女は就労支援B型施設の職員。今日は施設で作っているクッキー・英字新聞のバッグ販売ということで大会に参加。同じ職種・出身ということもあり意気投合。「試食用クッキーですけど、食べてミラソン頑張ってください。クッキーだと、走る前に口がパサパサするかな。走り終わったらまた寄ってください」クッキーを食べかけていたが、思わず噴き出しそうになる。でもありがとう、頑張ります。
      
 定刻となり、いよいよスタート。事故後初レースなのでゆっくりスタート。ここシンボルプロムナード公園ランニングコースは一周二・五キロ。十キロの部参加なので四周するコース。途中橋があり、思っていたより起伏に富んだコース。周回コースだが、途中、オーケストラ、あるいは和太鼓演奏があり、退屈せず楽しんで走る。
 ただ、五月の大会にしては暑い。給水は確実にしておかねば。昨日の医師のアドバイスを思い出す。ただ、都会のコースは新鮮だし、参加できた喜びもあり、気持ちよく完走。タイムは51分44秒。予想の範囲内に収まっている。
 着かえを済ませて昼食。グルメの屋台が並んでいるが、ここは精神障害者の施設出店からと思い、ナンカツバーガーに決める。これはインド料理に出るナンでハムカツと生野菜をはさんでピリ辛ソースで食べる。これを作っている施設は葛飾区南部にあり、これも南葛(ナンカツ)。左手でナンカツを持ち、右手に生ビール。いいね。
        
 今日はとにかく暑い。生ビールとそれに合う食べ物、例えば唐揚げ・フランクフルトの類は飛ぶように売れている。障害者の施設というとパンやクッキーを製造販売するところが多い。これらは暑さがあだとなってかあまり売れず。終わりごろには「値引きします。買って下さい」と持って回りながら打っていた。ちょっと気の毒。
 昼食を済ませると、朝知り合った彼女のブースへ。「お帰りなさい。どうでした」しばらく会話を楽しむ。「せっかくだから、お土産はここのクッキーにします」と私。「サービスで英字新聞のバッグをつけています。私がよいのを選んであげますね」
 「これ、スポーツ面で作ってあるのであなたに向いているかと思います。でもジャイアンツの記事が少し載っていますがいいですか」「構いません。ジャイアンツの記事はバッグの底のあたり、上だったら困るのですが」「その気持ち、とてもよくわかります。」東京は遠いから、ミラソンは最初の一回だけ参加しようと思っていたが、こういう出会いがあると、「もう一参加しようか」と思ってしまう。ただ、来年は「慰謝料で参加」というわけにはいかない様にしよう。
 ステージでは、歌や踊りなどが行われているが、障害者雇用に熱心な企業の人事担当者によるトークショウもある。表彰式では遠距離症もある。私が選ばれる可能性もあるだろう。インタビューを受けたら何と答えようかと思っていたが、沖縄から参加の人となった。沖縄ならあきらめもつくよ。
 全ての行事が終わると、そのあたりを散策。お台場に自由の女神像あるいはガンダムの像があるなんて知らなかった。その後歩いて「大江戸温泉」に行き、ゆっくり入浴。今日の汗や疲れを流しほっとする。犬も入浴できる浴場が併設されているが、その名を見ると「綱吉の湯」思わず噴き出しちゃった。
 さて、今日は夜行バス「エトワール瀬戸号」で帰宅予定。明日は町民運動会参加。新幹線で帰宅のほうが楽とは思うが、今回初めて自分で予約した。失敗しながら何回も試みて予約完了の「早得きっぷ」町民運動会の情報が入った時点でキャンセルする手もあったが、なんだかできなかった。まあいいや。話のタネに一度くらい夜行バスを利用しようという思いがあったのだし。
 強行スケジュールの暑い週末だったが、有意義に過ごすことができた。疲れが出ない様来週は心して過ごすこととしよう。