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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   「四季の歌」の思い出
 先日、音楽療法の時間に「四季の歌」が取り上げられた。打楽器・ハンドベル・ギターと三つのグループに分かれ、それぞれ練習し、最後に合同演奏を楽しんだ。
 「『四季の歌』といえばハーモニカ」小さくつぶやく私。「今、手術はできません。抗がん剤による治療を先行させましょう」と岡山大学病院の医師に言われた。「抗がん剤の治療なら大学病院でなく、地元の病院でできます」ということで退院となった。
 抗がん剤治療の期間を利用し、ハーモニカの練習をすることにした。いずれ全身麻酔による手術を受けるのだが、その際には肺活量・リズミカルな呼吸が求められる。手術前、呼吸の練習をしている患者を何人か見ている。正しい姿勢で腹式呼吸を意識しながらハーモニカを吹くと安定した呼吸となる。
      
 練習曲の一つに「四季の歌」があった。明るくさわやかな曲というイメージを持っていたが、マイナーハーモニカで吹くと知り、驚いた。マイナーは主として短調の曲に使用する。そして短調といえばどちらかというと「暗く」「哀愁漂う」曲が多いのが特徴。
 ハーモニカを練習している私に知人が「Nさん(音楽療法士)はハーモニカも教えているのよ。彼女に教えてもらったら」と告げた。「年の離れた若い女性は苦手で通しているのを知っている貴女、何故そういうの」と返した。
 抗がん剤の治療が進むと、副作用で歯が次々抜け、総入れ歯となった。抗がん剤で免疫力が落ちると、歯槽膿漏・虫歯が一気に進み、歯が抜けると聞いているが、まさにその通りとなった。
 総入れ歯でハーモニカを吹いている間に、入れ歯が途中動いたらどうしようという不安からハーモニカの練習はしなくなった。
 今回のことをきっかけに、ハーモニカで四季の歌を吹いてみましょうか。最初から入れ歯をはずして。
   今ですか? 
 「宮崎に行ったら、楽しんできてね」妻が言った。「ありがとう」「お土産はいいからね」気を遣わなくてもいいよという思いやりだとは思うがそうはいかない。12月7日第一土曜日は出勤日にもかかわらず、しかも福祉バザーなのに有給をとって宮崎へ行く。お土産を買った方がいいだろう。
 「宮崎のフルマラソン、気持ちよく完走しました。お土産です」ということはたやすい。でも「今回は途中で棄権しました。お土産です」とはなかなか言えないだろう。だからお土産を買うことは私にとって、完走するための儀式というかゲン担ぎでもある。
 宮崎駅構内のお土産屋さんで色々購入する。お菓子の場合何個入っているかということは購入する際の大切な要素。職場の利用者、ある家族全員に行きわたる個数でなければ争いの種を持ち込むことになるかもしれない。しっかり選んで購入する。
     
 さて、9日月曜日、帰路につく。「にちりん」「ソニック」とJR九州の特急に乗るが、宮崎と小倉の間はとにかく長いというか長時間かかる。日曜日に帰るわけにはいかない。福山駅までは可能だろうが、福塩線の最終には間に合わない。宮崎で一人打ち上げをするのも恒例行事。
 翌朝7時半ごろホテルを出て、福山駅に着くのが14時半を少し過ぎたころ。新幹線のホームから降りる。「えっ!」福山駅構内で、「九州物産展」を行っている。
念のため見て歩くと、私が宮崎で購入した品も置いてある。エー、なんで。物産展をするのはいいけど、なんで今なの。なんだか私が購入したお土産が色あせた感じがするよ。何もかも「今でしょう!」では困ります。