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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   電話に関するお話     皿海英幸
 職場へ私は妻手作りの弁当を持参している。人はそれを「愛妻弁当」という。ちょっと待って。夫婦とは愛によって結ばれていると私は考える。だから「愛妻弁当」は、重ね言葉というかちょっと不自然な言葉のように私は感じる。
 それはさておき、七月中旬の出来事である。今日も弁当を食べ、事務室の机に就いて、うとうとしながら昼休みを過ごしていた。至福の時である。
 「ううん!」電話が鳴ったようだ。急いで立ち上がるなりとなりの机上にある子機をつかんだ。条件反射か。「もしもし」言おうとしたがやめた。一瞬早く他の職員が本機をとり、対応し始めていた。椅子に座りなおし、子機を戻そうとするが、台に置くことができない。二~三度するがダメ。隣の職員が気付き私を見る。「えっ!」子機の台ではなく、その手前のデジカメ(カバーに入っている)の上に置こうとしていた。
        
 「ゴメン。寝起きが悪いもので」苦笑しながら立ち上がると子機を正しい台に置く。しっかり目が覚めていないのに電話が鳴ると子機に手を伸ばすなんて、私は仕事熱心なのだな。それともサラリーマンのかなしい性か。
 その日の夕方、教育委員会へ行く、「九月に行われる府中市陸上競技大会の申し込みに来ました」窓口で告げる。今年の夏は暑そうなので、何か大会に申し込んでおかないと、マラソンの練習がおろそかになるのではという不安がある。それに何と言っても今年は六十歳になった。還暦祝いに赤いランパン・ランシャツを着て出場したいという思いがある。赤いランパン・ランシャツに関しては昨年「青太マラソン」出場の際、売店で購入している。
 ついでながら息子が持っている「府中市中学生男子走り幅跳び新記録」が継続しているか確認してみたい。以前我が家は家族ぐるみで陸上大会に参加していた。
 「分かりました。それでは申込用紙に必要事項を記入してください」窓口の女性に促され、用紙を黙読しながら記入していく。参加種目はマスターズの部一五〇〇メートルだ。「緊急連絡先は自宅電話でもよろしいでしょうか」「ケータイをお持ちでしたらケータイ番号をお願いします。「分かりました」とは言ったものの、自分のケータイ番号なんて使わないから覚えていない。もちろんケータイの電話帳にも登録していない。
 急いでウエストポーチからケータイを取り出して開く。「待てよ、プロフィールはどうやってみるのかな」戸惑っていると「ちょっといいですか」窓口の女性が私のケータイを持ち、「〇」をおす。たちまちプロフィールが現れる。それを見て記入し、提出する。
      
 それにしても、ケータイ会社の職員ではなく、教育委員会職員が、初対面の私が持っているケータイの操作方法がよくわかったな。関心、関心。まさか窓口に来る市民が私のような人が多数いるので必要に迫られてケータイの勉強をしたというのではあるまい。
 でも、今日は電話に関して、二度も照れ臭い思いをしてしまった。まあいいや、「不器用も個性」だ。そして陸上競技大会だが、役員のほとんどは私が胃を全摘していることを知っている。少々タイムが遅くても大丈夫。楽しんで走りたい。