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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    もうすぐ七年目    皿海英幸
 福塩線の始発電車に高木駅から乗る。冬と違い既に空が明るいからか、乗客が増えた気がする。目指すは岡山医療センター。久しぶりのがん検診だ。
 「忘れ物はないかな」着席すると不安になる。「不安障害」というより、実際忘れ物をした経験があるのだから無視できない。保険証・診察券・治療費としての現金・入れ歯、以前忘れたことのあるものを確認。「あっ!一つあった」CT検査の承諾書だ。でもあれは患者用控えであり、もう一枚は医師を通して提出してあるから構わないだろう。
 八時十分、機械での受付を済ませ、外科の受付へ。「血液とCTの検査がありますね。CTの承諾書はお持ちですか?」やはり聞かれたか。「申し訳ありません。忘れてきました」パソコン画面で確認していたが、「いいですよ。まずは採血の受付へ行ってください」
 「名前を呼びますので、この付近にいてください」採血の受付で告げられる。造影剤を使っての検査は、腕に採血の針を残しておき、その針を使って造影剤を入れるので、必ずここを済ませておかなければならない。
 「スムーズにすませられればいいのだが」前回は今回と同じ九時の予約だったが、採血が始まったのが八時五十分。「四人しか待っていないのになんで」とイライラした。
 「皿海さんどうぞ」思ったより早く呼ばれた。余裕でCT受付に行くと八時三十分検査開始。よしいいぞ。検査もよければいいのだけれど。
 検査がすべて終了した途端、空腹感に襲われる。検査の日、朝食抜きは仕方がないが、糖尿病治療中で、低血糖が心配。もっともここは医療センター、倒れたらスタッフが何らかの処置をしてくれるだろう。食堂へ行き、朝定食の和食をいただく。そして持参した「癒しのジョギング 矢野龍彦 著」を読みながら診察を待つ。
 「ねえちょっとここの先生、前の人が出ていったのに次の人をなかなか呼ばないね」周りの人がささやいている。たしかにほかに比べ、かなり間隔があいている。でも医師だって診察の合間に一息入れたいときがあるだろう。もしかしたら次の人の検査結果がよくないので、どんなふうに話そうか、どういう治療をしようか考えているのかもしれないし。ここの医師は消化管のがんが専門なのだから。
 「皿海さんどうぞ」エー、なんで私なの。まあいいや。どういう結果でも受け入れるつもりで診察室へ。「最近どうですか」「はい順調です」まずは問診。「じゃあベッドで横になって」触診が始まる。「いいですよ」と言われ再び椅子にすわり、医師と向き合う。
 「血液検査・CTの検査で問題はありませんでした。貧血も改善されています。この調子でいいですよ」
「ありがとうございます。ところで私、六十歳となりました。いつまで働くか、年金をどうするか考えるころかと思います。本来あるべき胃を全摘しているので老化が早くやってくるのでは、長生きできないのではという人がいますがどうでしょう」「手術して七年でしたかね」「今年の八月で七年です」「七年で今の状態なら大丈夫でしょう。がんのことは考えず、一般人と同じく自分の体力と相談しながらいつまで、どんな形で働くか決められたらいいと思います」
 良かった。当たり前といえば当たり前のようだが、がん体験者にとり、当たり前の答え・平凡な日常こそ大切に感じるときがある。特に、当時は「元気になった人の前例はほぼありません」と言われたスキルス胃がん。平凡な日常をこれからもつづけたい。
 よし!今日は暑いが、気持ちよくジョギングを楽しんで帰ろう。
 最近フェイスブックを始めた。短文や写真で情報発信できるし、反応がすぐにわかる。手軽で便利ではあるがそれはそれ。エッセイも記すことにより、自分を見つめる時間、整理する時間を持ちたいと思っている。