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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

    御寺でお花見
 「今年の連休は前半三日、後半四日合計七日あるのだから一日くらい出かけたいな。と言っても行楽地は人出が多くて疲れるし、どこかいいと来ないかな」と思っていた。人の流れと逆方向ならのんびり過ごせるかもしれない。そうだ、三次へ行ってジョグを楽しむという手があるぞ。待てよ、三次といえば「とまーれ県北」。多色刷りの鮮やかな会報誌三月号を取り出す。「お花見会 四月二十八日会場は御寺」というお知らせがある。
 早速会の責任者Hさんに電話をする。「府中市の皿海ですが、お花見に参加してもよろしいでしょうか」「ありがとうございますどうぞおいで下さい」明るく元気そうな声が聞こえる。とても四月初旬に手術をされた人とは思えない。
 Hさんの夫と私の妻は共に体育教師の経験があり、知り合い。そして私たちはがん患者活動を通して知り合った。不思議でもあり、楽しくもある関係だ。
 インターネットの地図で会場を確認。三次駅で下車し、売店で三次の地酒を買おうか。そしてバスで美術館まで行き、そこから歩くか。それとも神杉で下車し、歩いて行く方法もある。よし、今回は神杉で降りよう。田舎の無人駅、もしかしたら焼酎二階堂のCMみたいな雰囲気を楽しめる徒歩になるかもしれないぞ。
 さて二十八日、七時五十九分高木駅を出発。府中駅でディーゼル車に乗り換える。車窓から見える県北の景色が好きだが、今日は太陽の光がまぶしく、カーテンを利用してある。そこで持参の本「海堂尊著 マドンナ・ヴェルデ」を取り出す。ディーゼル車の速度あるいは雰囲気か、読書がはかどる。
 神杉につき、私一人下車。無人駅だが、建物はコミュニティホームと表示あり。地図で確認し、歩き始める。周りは田園風景。しばらくすると地図は不要に。御寺特有の建物が見えてくる。そして視界の片隅には「きんさいスタジアム」
 三十分ほど歩き、到着。花見ということで庭に大きなブルーシートが敷いてあるかと思ったが、シートはない。不安に思い人を探して声をかける。「がん患者会の花見は部屋で行います。今は日曜教室ということで、子どもたちが裏山でタケノコ堀をしています」という返事。
 定刻に近づくと、見覚えのある人たちが来られる。「お世話になります。府中市の皿海です」「おはようございます。文章がうまい人ですよね」「うまい」というのとはちょっと違うのだが、笑顔で近況報告。
 「予想より、多数の参加者がありました。桜は葉桜となりましたが、皆さんの笑顔満開。どうぞ今日はゆっくり楽しんでください」Hさんのあいさつで開会。
 次に私を紹介して下さったので挨拶。「四月で六十歳となり、還暦祝いにカープの赤いユニホームをもらいました。今年夏には術後七年です。五年生存率は低かったですが、まだまだ元気で生き抜きたいと思います」拍手多数。三次の皆さんにも還暦を祝っていただきうれしい限り。
 会費千円だが、オードブル・柏餅・いなりずし・飲み物等盛りだくさん。特に「庄原に行って買いました」といういなりずしのボリュームにはびっくり。私だとこれ一個食べたら他は何も食べられない。値段が一個五十円と聞き、またびっくり。
 住職の奥様が今日とりたての筍をすぐに調理して差し入れてくださった。「筍は先の柔らかいところがうまい」「いや、根元の固いところがいい」と議論に。また、三次地方の方言、山の植物等たわいもない話で盛り上がる。皆さん元気であり、特に深刻な症状を抱えていないということか。だけど最後は「私たち、がんになったのだから、意地でも長生きしようね」と確認し合う。がん患者も気合とはったりが大切。ただし、それだけではいけない。適切な医療があってのこと。
      
 会食後は境内の散策。桜は葉桜だが、シャクナゲのピンクがとてもきれい。そしてみんなで記念写真。
 帰りには例のいなりずし、とれたてのタケノコ等たくさんのお土産をいただいた。そして、神杉の方が駅まで送って下さった。楽しい花見ができ、元気をたくさんいただいた。収穫の多い一日だった。