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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   楽しんでゴール      皿海英幸
 「四回目ともなれば、懐かしさを感じる風景となるよな」宮崎駅前の通りを歩き始める。デパート山形屋に入り、お土産を購入。お土産を渡す時「気持ちよく完走できました」と言って渡したい。「途中棄権ですがどうぞ」というより相手も受け取りやすい。だから私にとってお土産購入もマラソン練習の一環と考える。
 十七時、ホテルにつくと大会受付をし、あすのスケジュールを確認する。大会本部紹介のホテルだと、これができるのが便利。休憩後、夕食のため外出。「元気が出る食堂」と記した看板にひかれ入店する。宮崎名物「チキン南蛮定食」を注文。「えっ!」八百円余の値段だが、出された量が半端ではない。チキンはもちろん、ご飯・味噌汁もどんぶりのような器によそってある。「これで普通盛なのか。小盛りでもよかったな」心でつぶやく。この店はガッツリ食べて元気を出そうという食堂なのか。それとも九州男児は食欲旺盛な人が多いのかな。胃を全摘している私に完食は無理。申し訳ないが少し残してごちそうさま。明日に備え、いつもより少し早めの九時三十分に就寝。
 いよいよ十二月九日、四時三十分起床。お茶を飲みながら読書をする。五時三十分、ホテルの食堂で朝食をとる。七時五分に大会本部チャーターのバスで会場へと向かう。「あっと!忘れ物だ」スタート前、会場で捕食にと昨夜コンビニで買ったおにぎりをホテルに忘れてきた。まあいいさ。悪運をスタート前に使い切っておけば、あとはよくなる可能性大だ。捕食は会場であしたば入りうどんを食べることにしよう。
 うどんを食べると、「ピンクリボン宮崎」のブースへ行く。テーブルの上は乳がん自己検診モデルが並んでいる。そしてピンクリボンと宮崎のMを組み合わせたマークのグッズ(ハンカチ・シール・エコバッグ等)をどれでも五百円で販売している。一番目立つし長持ちするだろうと思いエコバッグを購入。帰ったらお世話になっている乳がん患者の会「のぞみの会」「福山アンダンテ」の会員さんに見てもらえればいいのだが。
 九時、スタート。気温は十℃。だけど風はとても冷たく、体感温度はかなり低い。北部九州は雪がちらついているのだからしょうがないかな。こんな時はゆっくりスタートだ。混雑しているからと空きスペースを探して蛇行するより、流れに身を任せ体力温存。
 少し身体が重い気がするが、構わない。今日は四十二・一九五キロを六時間近くかけて走るのだから、十キロあたりから快調になればそれでいい。それまでは周りの景色・雰囲気を楽しみながらゆっくりジョグだ。
 それにしても風が冷たい。給水は大事だけれど、尿意を感じる。冬のマラソンは女性より男性に有利だな。いよいよとなったら男性は立ちションが可能だもの。ただし、風があるので自分に返ってくることも覚悟の上での話だが。
 順調に走ってきたが、二十キロ手前で右足膝部に痛みを感じる。十日くらい前から練習中、なんとはなしに違和感があったのだから仕方がない。こういう状況の中でどれだけ粘れるかが今日のテーマだな。
 トイレ設置場所あるいは給水所では用事を済ませながらゆっくりストレッチ。右足の痛みが和らぐ。この方法を繰り返すことにより、完走は可能だろう。タイム・順位はこだわらないのだからしっかり楽しもう。
 二十五キロを過ぎたあたりで右足全体に痛みを感じ始める。練習では三十キロ走を取り入れているので、それを超えたあたりで痛みを感じるのならわかるが、ちょっと早い。大会本番だと、力み等いつもと違う要素があり、早目に痛みを感じるのかもしれない。できるだけゆっくり、無理をしない走りで様子を見ることにしよう。
 腰のウエストポーチには念のための捕食としてカロリーメイトを入れているが、今回も必要なさそうだ。十八・五キロの給水所から、バナナ・日向夏ミカン・マンゴーゼリー・トマト・餡パン・日向夏ゼリー・えび天・が置いてある、給水所ごとにそれぞれ置いてあるものが違うので、「足が痛くても、次の給水所までは頑張って○○を食べよう」となる。それを繰り返しながら,「ここまできたら、完走しなければ」となる。
 本部の給水所以外に個人によるサービスがある。今回私は、氷砂糖・黒糖・クッキー・カステラとコーヒー・ぜんざいをいただく。宮崎の人は親切だな。そのため用意していたカロリーメイトを食べなくても、エネルギー切れを起こすことはなく、むしろ完走後は小腹が起きており、昼食は不要だ。
 ただ、青島トロピカルロードは強風、足は痛いし身体は寒い。飛ばされないよう帽子は手に持ち、走ったり歩いたり。でも、フルマラソンは不思議だ。辛い思いをして走っただけ、完走後に「もう一回出場したい」と思わせる。つまり右足の痛みは次回出場へのエネルギーか。とはいえトロピカルロードは景色がいいだけに、天気の良い日に快調に走ったら最高だろうと思わせる。
 大会会場県立運動公園に入る。ポーチから入れ歯を取り出して口に。私は抗がん剤の副作用で総入れ歯。走っていて苦しくなったとき、入れ歯を外すと空気の入り方が変わるからか、またしばらくは元気に走ることができる。昨年は入れ歯を外したままゴール。そのためだろう、ゴールの瞬間を写したDVDを見てもらった知人「何回見ても皿海さんがわからなかった」 タイム、服装を伝えていたにもかかわらず。今年こそは私を認識してもらいたい。えっ!ということは今年もDVDを購入か。
 ラストスパートをする。右足膝の痛みだけでなく、足の筋肉がぴくぴくする部分あり。ゴールしたら足がつる可能性大だが、かまうものか。一年間の集大成でありご褒美としてのマラソン。気持ちで突っ走れ。思ったより走れるぞ。ゴール付近「手を挙げて笑顔でゴールしましょう」という声があり、つられて手を挙げる。本来なら駅伝選手のように全力を出し切り倒れ込むようにゴールするのだが。
 タイムは昨年より少しだけ短縮されていたが、不思議なことに身体の芯からくる疲れを感じない。今までは筋肉痛だけでなく、内臓疲労というのか芯に疲れを感じ、十二月中はなんとはなしに元気が出なかったのだけど。気持ちの上ではあすからでもジョギング再会ができそう。これも楽しく走ったからかな。
 今回でフルマラソン完走四回目。胃を全摘していてもトレーニング次第でフルマラソンを完走できることが実証できた。全摘手術六年半、ビタミンB12の不足からくる貧血症状がありながらも完走。無理は禁物だが、楽しく走ることはできた。よしホテルに帰ったら一人だけれど打ち上げだ。もちろん宮崎だから焼酎で。そして来週は予定がたくさんあるが、内科にしっかり通院し、ビタミンb12の補給だ。
 中村勘三郎さんががんで亡くなられ、宮迫さんは胃がんの手術、今世間でがんに関する関心が高まっているのではと思い、今回は恥ずかしい部分も含め、私のマラソン体験を率直に記してみました。何か参考になる部分があればよいのですが。