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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   直前の休日に      皿海英幸
 12月2日、いよいよフルマラソンまであと1週間となった。最後の日曜日をどう過ごすのがいいだろう。今までは手術により、生かしてもらった岡大病院の前を含む岡山市内をジョグすることが多かった。本番に向け気分を高める意味で効果的だ。
 ただ、今年は家庭の事情により遠出してのジョグを控えている。それに家事がたまっているので今回はやむなくパスとしよう。となると、①福山をジョグし、映画を見て帰る。②府中市内いつものコースをジョグし、「いきいきフォーラム」を聞きに行く。どちらかだ。
 少し迷ったが②に決めた。いつものコースなら距離・所要時間がわかっている。それに今回のフォーラムは全盲のピアニスト・辻井伸行さんの母いつ子さん。障害を持ったわが子とどう接し育てたのかに関心がある。また、私はがんになる前に視覚障害者の伴走ボランティアをしており、全盲と聞くと無視できない。
 あいにくの雨なのでカブでの外出とはいかず、傘をさし徒歩で文化センターへ。「子どもの才能の見つけ方、伸ばし方 辻井いつ子」と題する講演の印象に残ったところを記してみたい。
 「今日の風、なに色?」と私に訊いたことがある。全盲の彼には風の吹き方で違う色のように感じる。このような感じ方を大切にしたい。
 「ピアノは調律もあり、視覚障害者にとって最も難しい楽器。やめた方がいい」周囲の人は言いました。だけど私は「障害があるからだめ」とか「無理」とは考えなかった。子どもが興味を持ったこと、やりたがることは何でも援助し、やらせてみた。「大丈夫」「きっとできる」「いつもどおりにやればよい」とポジティブな言葉で背中を押してあげるようにしている。
 前例がないのなら、我が家が前例になればいいと思って育てました。             以上
 風の吹き方により、違った色に感じるという感覚は新鮮だし、素晴らしいと思う。障害を持っている人の中には独特の感性を持っている人がいる。それを生かしてアピールできる人がいる。「健常者の感じ方とは違うから」と否定せず、個性であり、才能であると信じて接したい。
 興味を持ったことは何でもやらせようというのは素晴らしいと思う反面、現実的には「難しいのでは」と思う個所がある。本格的にピアノを練習させたり、親子で海外旅行に行ったり。我が家で考えた場合、資金が続くかという不安がよぎる。時間的にも共働き家庭では困難を伴う感あり。
 子どもは時として親から見ると突拍子もないものに関心を持つことがある。そんなとき、背中を押すのではなく、地道に生きることの大切さを説くのも育児だと思うのだが。医師の父、元アナウンサーの母と比較的資金も知名度もある家庭だから続けられた部分、成功した部分があるような気がするのだが。
 だからと言って辻井さんの足を引っ張り、否定しようとは思はない。やはり子どもの可能性を信じること、固定観念で観ないことは大切。そして個々の家庭でできる精いっぱいのことをわが子にしてやろうと思うのは純粋な親心。何より障害の有無にかかわらず、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝するのは大変なこと。
 「前例がないのなら我が家が前例になればいい」にはドキ!まさに今の私の生き方、心意気に通じるところだ。
 帰宅し、パソコンをチェックすると「ふくやまアンダンテ」からのメールが届いていた。「2月に講演していただく予定なので、『アンダンテのお便り』12月号に皿海さんがフルマラソン出場を決めた際のエッセイを載せさせてください。そして、宮崎でのフルマラソンを応援しています」といった内容。よし。今日は有意義な休日を過ごすことができたぞ。この分ならフルマラソン、楽しんで走ることができるだろう。
 でも、急に寒くなったな。おっくうで家事が思ったほどはかどらなかったのが少々気がかり。