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2012 - がん友、皿海英幸さんのエッセイコーナー

   ひやひやしていました
 「父さん、冷蔵庫のホタテ、加熱用なのよ。どうして生で食べたの。表示をよく見てよ」「えっ、そうなの、知らなかった。でもおいしかったよ」帰宅した妻との会話。今日は妻の帰りが遅くなるのがわかっていたので、冷蔵庫にあるものを適当に見繕って一人食事を済ませた。
    
 食べて既に二時間。お腹に異常はないが少し不安。主治医には「あなたは胃酸がないので、お腹の殺菌力は弱い。新鮮なものを食べるようにしてください」と常々言われているというのに。インターネットで調べてみよう。「えっ!こんなのありなの」「加熱用ホタテを食べてしまった場合」というサイトがある。私だけではないのだとほっとする。だけど。
 一晩寝て起きて大丈夫だったら、貝毒の心配はなさそうだ。ただし、ノロウイルスは潜伏期間があるので2~3日気をつける必要あり。え~2~3日はちょっと長い。でも、心配してもしなくても既に食べてしまっている。くよくよするより、このことを忘れるくらい仕事等に集中して過ごそう。
 今日で1週間が過ぎたが、異常はなかった。よしよし、よかったな。こういうのを鉄の胃袋というのかな。いや、私には胃袋はない。これからは十分気をつけよう。でも正直、ひやひやしたな。

  一人酒 
 八月二十八日は私の6回目の誕生日(術後6年経過)。その記念というわけでもないが、内科を受診し血液検査をしてもらう。ヘモグロビンA1C・食後血糖値、ぎりぎりでは春が正常範囲に収まっている。「胃がないにしてはよくコントロールされていますね」三回連続して医師に言っていただく。まさに誕生日のお祝いのような言葉だ。内心、お盆に飲んだり食べたりしていたので、今回は悪い結果が出て、お叱りの言葉があるかなと予想していたのだが。
 喜び勇んでアパートへ帰宅と記したいところだが、妻・娘はコンサートで広島へお出かけ。部屋に入っても誰もいない。
 1回目の時はとても喜んで家族してパーティで祝ってくれたのだけど。6回目ともなれば仕方がないか。家族にとって、私のがん体験は平凡な日常生活の一コマとなったのであれば、それはそれでいいことなのかもしれない。いつまでも特別扱いというのも不本意だ。
そう思いながら、手料理をつくり、一人でお祝いをする。「乾杯!」
     
 そうはいっても、二重の喜び、誰かに伝えたい。そこで数人の知り合いにメールで伝える。「おめでとう」と何通か返事があった。「スキルス胃がんで6年間生き抜いたなんて「本当に勇気づけられます」と知り合いの医師から返事が届いてきた。やっぱりわかる人はわかるのだ。良かった。スキルス胃がんの患者のためにも、家族のためにももっと長く、生き続けるぞ。

   バラ色の写真展
 「ああ、やっぱり」プリンターから出てくるのは赤みがかった写真。黒いインクがないのを承知で印刷したのだからしょうがないや。
 リレーフォーライフ リフレ写真展でお世話になったTさん・Hさんに何かお礼をしたいと思って写真をプリントしたのだけど。
 「ごめんなさい、こんな色で。でも、バラ色に見えますよね。あなたの明日のように」「ありがとう。ほんとバラ色ですよね」
 けがの功名、物はいいよう。二人とも、笑顔で受け取ってくださった。